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昨年115日号の日経ビジネス誌に公文教育研究会の角田社長の編集長インタビュー記事が出ていました。皆様よくご存知のあの公文式の「公文」です。現在世界47カ国、400万人近くの人々が公文式のもとで日々学習をなさっているということで、日本発の名だたるグローバルビジネスを世界中で展開なさっておいでです。まさに「世界の公文」です。私自身は日本では公文式にお世話になったことはなかったですが、むしろ日本を出てアメリカにきてから公文式を知りました。ちょっとした郊外の小規模なショッピングモールの目立たない一角に公文式の教室があったりして、こんなところにも公文式があるのかと感慨深く観察したことがありました。

 

一口に世界47カ国に進出されたといわれても、国それぞれに教育システムや使っている教科書などすべて違っているはずですし、日本以外で日本語を使っている国は世界中どこにもないわけです。そのような千差万別の教育上での違いがあっても、公文の角田社長は、学習の土台作りである読み、書き、計算の3つの基礎学力にはその国の言葉にさえ合わせれば、あとは違いがなく、海外でも公文が実施する個人別指導とあいまって教育カリキュラムには直接関係なく公文が受け入れられる素地があるのだと話してくれています。

 

教材に書かれてある質問や解説の文章は現地の母国語に翻訳されてはいるものの、公文での教え方自体は世界共通だといいます。ですので、教材自体はその国の教育制度にあったようなローカライズは翻訳以外においてなされているわけではないということを角田社長の言葉から理解しました。つまり公文で使われている教材そのものは基本的に世界共通だということです。ただし、公文式を教えるインストラクターは現地の人に基本的に任せてすべてやってもらい、そこに日本からの駐在員が入るということはないそうです。

 

さらに公文が死守しているのはあくまで基礎学力の分野であって、決して受験勉強の分野にはこれからも進出されることは考えていないようですので、受験対策にもっぱら的を絞っている学習塾や予備校などとはもともと競合するようなこともないということになります。したがって他社との競争や買収などにも縁もかかわりもないというのは今のこのご時勢にあっってはかなり新鮮ですし、恵まれています。まさにブルーオーシャンの中を公文式はスイスイと自由に泳いでいるように感じます。

 

角田社長の言葉の節々に、「ちょうど」「とことん」「こつこつ」「褒める」「励ます」という誰にでも分かりやすい表現が「価値観の共有」「標準化と個別化」などの経営用語に交じって頻繁にインタビューの中で出てきます。分かりやすい表現ですから、翻訳しても分かりやすいはずですから、あえてそれ以上のローカライズをする必要も要求もなかったのではないかと察せられます。そのために世界に出て行っても受け入れてくれる多くの国々がそこにあったということだと思います。

 

教育に関することでありますから、教材や指導法などはよほどローカライズしてそれぞれの国々に合わせたものを一つ一つ地道に作り込んでいったのだろうと思いきや、実際はまったくその逆を公文は地で行っていたわけです。それは、偶然そうだったのかも知れませんし、あるいは試行錯誤の結果としてそうなったのかもしれませんが、子供一人ひとりが持つ学力に合わせた個人別指導と基礎学力作りに徹して終始ぶれることがなったからこその当然の帰結であったと考えたほうがよさそうです。

 

ますます日本企業は海外に出て行かざるを得ないご時勢となりましたが、海外に出て行ったときに海外でも毅然として残し続けるものと「郷に入らば郷に従え」という諺にあるようにきっぱりと捨てて変えていかればならないものとが出てくることでしょう。「郷に入らば郷に従え」というのがまさにローカライズの真骨頂なわけですが、それをあえてやらないというのは勇気のいることです。しかし、世界どこに出て行っても会社の理念やビジョンを貫き通そうとするのであれば、ローカライズはあえてしないという信念も公文式のように立派に通じるところがあり、世界中で受け入れてもらえるものであるわけです。

 

今後日本企業は、賃金が安くて若い労働力が豊富にあるから新たな新興国や途上国に進出するというだけのスタンスでは、長い目で見た場合、本当にその進出先の国での操業を続けていくことができるものかどうか疑問を抱きます。自分たちが持っている信念をその国の人々に伝えて理解してもらい、その国への未来の発展に寄与することができなければ、その国での人々の賃金が上昇してきた暁に、また逃げるようにしてさらに別の国に操業を移させるというのでは、そのうちそのような国は地球上からなくなってしまうようなことになったとしたら、日本企業はいったいどこで操業するというのでしょうか。

 

公文式の世界47カ国での浸透は、今後の日本企業のグローバル化を推し進めていく上でとても参考になるのではないかと思います。そして最初の段階でどこをローカライズして、どの部分はローカライズさせないという線をしっかりと引いておくのことは、グローバル化する企業にとっては非常に重要な方向付けになることだと考えさせられた、日経ビジネス誌での公文の角田社長に対する編集長インタビュー記事でありました。

 

 

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