
我が家の音楽愛好家である妻や娘の影響で年間で通しの地元交響楽団(オレゴン・シンフォニー・オーケストラ)のシーズンチケットを購入し、毎回は無理なのですが、できる限り合間を見つけては、私も定期コンサートに出かけています。今月初めにありました、2009/2010シーズン最後の定期コンサートは、ブラームスのバイオリン・コンチェルトならびにマーラーの交響曲第1番「巨人」というまさに大曲の詰ったボリュームあるプログラムで、夜8時から始まる地元の大学キャンパス内(ウィラメット大学– セーレム市)にあるコンサートホールにいそいそと向かいました。
夜8時スタートのコンサートでは、大曲2曲の演奏で休憩を挟んで終了までには優に2時間を超えてしまう時間配分となりますので、夕食は、コンサート前に済ませておかなければ、それこそコンサート中にお腹の方が、シンフォニーを奏でてしまうことになってしまいます。そこで、大学があるセーレム市のダウンタウンにあるレストランで食事をするのですが、今年になってから、オレゴン・シンフォニーと地元ダウンタウンにあるレストラン組合とがビジネス・アライアンス(提携)をとりつけ、定期コンサートごとに2、3のレストランが選ばれて、コンサート・ゴウアー向けのスペシャル・メニューを用意してくれていて、前もってメニューの予約を入れておけば、手際よく食事を運んできてくれるというはからいが生まれました。
と云うのは、お分かりかもしれませんが、仕事が終わってからレストランに直行するにしても7時近くになってしまい、8時から始まるコンサートに遅れないようにと大変せわしない食事になってしまうことがほとんどだからです。今回は、夕方6時半にレストランに予約を入れ、あらかじめメニューの方も決めておいてもらいました。ダウンタウンのホテルの中にあるレストランにその日、6時半きっかりに到着しますと、レストランの一角がすべて、コンサート・ゴウアー用のテーブル設定になっていました。 私と妻とでホテルロビーで待ち合わせをし、レストランに案内をされたのですが、その日は、ホテルをはさんだ市のコンベンションセンターでも大きなイベントがあったようで、レストランの方はすでにかなり込み合っていました。
コンサート・ゴウアー用に用意していたテーブルも少々不足気味で、他のカップルの方々との相席ということになりました。もちろん初めてお会いする方々ではあったのですが、クラシック音楽好きのほぼ同年代のご夫妻の方でしたので、相席とはいえ、お互い大変弾んだ会話を楽しむことができました。話をしてみますと、お住まいも私たちの住んでいる区画からほんの数百メートルしか離れていないところで、話し好きな奥さんからのお話(その方はアルゼンチンのブエノスアイレス生まれのドイツ育ちの国籍は現在でもドイツの人で、ドイツにある空軍基地でパイロットをしていたアメリカ人のご主人と知り合って結婚して、アメリカにお越しになったというような身の上話)をドイツ語訛りの強い英語で面白おかしく、軽妙な会話を大いに堪能しました。
このように、オーケストラが地元レストラン組合とビジネス関係を結べば、レストランのコンサートプログラム用に広告を載せることもレストラン側としてもインセンティブになりますし、それで広告収入やメンバーシップ・フィーがオーケストラに入ってくれば、財政上は決して豊かであるとは言いがたいオーケストラへの収入源の足しにつながります。また、コンサート・ゴウアーにとっても、効率的に食事が取れ、しかもゴウアー同士の予期しないような出会いや会話が生まれるという副次的な効果もあって、実利を伴うなかなか粋な企画を考え出したものだなと思わず感銘を覚えました。これも考えてみれば、オーケストラが地元で今後とも支援を受け、生き残っていくための立派なマーケティング戦略のひとつであるといえるのではないでしょうか。
ブラームスのコンチェルトで聴かせたロシア出身のソロ・バイオリニストの演奏も素晴らしかったのですが、何といってもオレゴン・シンフォニーの今シーズン最後の定期コンサートを締めくくるマーラーの「巨人」はまさに圧巻でした。そういえば、昨年の締めくくりもマーラーでした。(確か、交響曲第7番「夜の歌」。)オレゴン・シンフォニーの主席指揮者でスペイン出身のカルロス・カルマーは、マーラーのような後期ロマン派の大曲演奏を得意とした情熱的な指揮者であることがよくわかりました。マーラーの交響曲第1番は、私も最も好きな作品でもありましたので、久し振りにシンフォニーの名演にどっぷりとつかった至福の今宵でありました。
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