
ご存知のように日本の得意分野あるいはお家芸と呼ばれる分野は、素材などの材料や装置やシステムの中に組み込まれている部品やコンポーネント類です。表からでは見えないものが多いので、目立つことは少ないのですが、世界中で生産されるPCや携帯電話機を分解してみれば、多くの日本メーカーの部品がその中で使われていることがわかります。自動車もしかりで、日本車以外の外国車メーカーにも数多くの日本の自動車部品メーカーの部材やコンポーネントが入っています。あのボーイングの最新型機787機での生産にも多くの日本の素材メーカーや航空関連メーカーが材料や部材を提供しています。
日本の自動車メーカーを除けば、それら最終製品の中で、世界中でその名を関して幅広く商売をものにしているのは、欧米メーカーの方が日本メーカーよりもはるかに多いのは、疑う余地のないことです。そして最近では、欧米メーカーに加えて、台湾や韓国そして中国のメーカーが台頭しつつあります。いわゆる日本のメーカーは、単品での商売には長けており、海外のメーカーは、日本の高品質な部品を使って最終完成製品、もしくはシステムに組み上げてビジネスをしている、誤解を恐れずに言えば、大雑把に言ってそんな棲み分けが成り立つような状勢を呈しています。
確かに海外メーカーの最終完成製品やシステムが世界で売れてくれれば、それら海外メーカーに材料や部品を供給している日本のメーカーも当然ながら潤うことが出来ます。しかし、その潤い方が単体だけを供給している側からみたとしたら、こう言っては何なのですが、たかが知れているのではないでしょうか。以前のように大量生産で多くの利益を出していた時代はとっくに終わりを告げ、それら大量生産は、人件費の安い国々にどんどんと移転しています。そうなると日本メーカーとして日本で生産する部品や材料は、必ずしも大量生産には向かない、ブラックボックスになった付加価値の高いものだけに限られてきます。日本でいくらそのための研究開発や設計を重点的に行うといっても、どうもそれだけでは今後ジリ貧状態に陥ってしまうのが関の山ではないかという危惧を私としては抱いています。
一方の最終完成製品やシステム全体までを一貫して生産したり、組むことの出来るメーカーは、単品商売とは違って、リスクも当然大きくなるでしょうが、美味しいところを一人で十分味わえるうまみがそこにはあります。日本メーカーの単品商売と比較してみますと、システムを組める欧米メーカーや最近では韓国メーカーにやはりその底力が感じられ、日本の部品メーカーは、美味しいところをせっせと海外メーカーに献上しているようにさえ受け取れます。私などは、せっかちな方ですので、なぜシステムを組んでやらないのですかと知り合いの日本の大手材料メーカーさんで上層部にいる方々に進言をいたしますと、うちのような素材ばかりをやってきたメーカーではとてもシステムを組むところまではいかないからと、スタート時点につくはるか以前の段階で白旗を揚げてしまっている状況なのです。
もちろん、素材や部品の生産だけをしているメーカーが明日からシステムを組んで商売をすることなどは簡単に出来やしません。しかし売上げをあげてもらっているお客さんは、そのようなシステムを組んでいる海外のメーカー企業であるわけです。それらのシステムメーカーが行っているシステムを組むノウハウを学び取って、自社の戦略的イノベーションとして取り入れるほどの気概がなければ、いつまでたってもスタート時点にさえ立つこともかなえられるわけがありません。最近の韓国や中国のメーカーには、そのような気概や貪欲さを大いに感じさせてくれます。これでは、そう遠くないうちに日本メーカーが韓国や中国メーカーの後塵を拝するようになるのは目に見えてしまいます。
もうひとつ、システムを組むためには、自社だけでやろうとしていただけでは、すぐに限界が来てしまいます。他社とのアライアンスや技術提携、資本参加などをもっと積極的に推進していく必要があります。この提携、特に海外の企業との間での提携といった面でも、日本のメーカーは、自らが持っている技術をオープンにはしたくない、あるいはブラックボックス化することにこだわりがあるのか、閉塞感が漂っているのではないかと思われます。提携を求めるのであれば、自分たちからオープンな姿勢を示さなければ、海外にいる潜在的なパートナーも開襟を開いてくれることはないでしょう。これは、ギブアンドテイクの精神がベースにあるのはもちろんですが、常日頃から相手を単に競争相手としか見なさない日本企業の社内的姿勢にも問題があるのではないかと思われます。
今後、第2のインターネットといわれる、再生可能なエネルギーの双方向配給システムをベースにしたスマートグリッドやさまざまな社会のインフラをIT化していく大規模プロジェクトが国家単位で勃興してくることが予想されていますが、このままでは日本メーカーは、うまくいって大手海外メーカーの単なる下請け業者で終わってしまいます。つまり美味しいところはすべて持っていかれてしまうのです。単品商売の下請け業も中国のメーカーとの底なしの価格競争に巻き込まれてしまう運命を辿るかもしれません。戦略的イノベーションを目指す気概のある日本のメーカーは、単品商売とは別の道、すなわちシステムビジネスを目指す方向を一刻も早く模索し始めなければなりません。時間は、もうそれほど待ってはくれません。
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