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私が先週1週間東京にいる間、世界はものすごい株安に見舞われました。 しかもドルとユーロに対する急激な円高もほぼ同時に進行し、世界経済の中でも特にアメリカと日本の行き先はこれから一体どうなてしまうのだろうかという目に見えない恐怖に近い不安感を覚えた方もきっと多くいらっしゃったのではないかとお察しします。 リーマン・ブラザーズの破綻から始まった一連の金融危機がこれから実体経済の方に負のインパクトをまさに及ぼし始めるステージがついに切って落とされようとしています。

アメリカでは、個人の年金積立金制度であります401(k)という毎月一定金額を年金にまわすように個人が積立てを行い、企業側もある割合でマッチングさせて個人の積立ての支援をしてくれるという制度が広く確立しています。 しかしこの401(k)は、一般的には確定拠出型と呼ばれるタイプの年金積立で、401(k)の実態をなすものは、通常、投資ファンドが運営している投資信託(ミューチュアル・ファンド)の形をとっています。 つまり、年金積立金は、株式市場に連動しているわけですので、株式市場がこのような乱降下を続けるようであれば、401(k)で積んだ金額も同じく乱降下する仕組みとなっています。

私も以前勤めていた三菱マテリアル系の米国現地子会社で、401(k)を積んでいたのですが、その積立金額は、毎月相当な目減りを繰り返しています。(私が三菱を退職した後に、401(k)を個人の退職金積立口座(IRA)に移行しましたので、実際に目にするのは、このIRAの数字になります。)もちろん、私はまだまだ現役で、積立てをしている年金の方から生活費を引き出さねばならないようなことはあと少なくとも15年間はないものと信じますが、企業をリタイアして現在年金生活をしている方々にとっては、とても生活していられないという、行き場のない焦燥と怒りとに昨今は見舞われていることが、容易に想像することが出来るのです。

当然のことながら、これでは車を新しく買い換えるというような気にはとてもならないでしょうし、旅行やバケーションも差し控える、あるいは倹約した短期間のものにするといった自衛手段は“To Do List”にすぐに加わるのではないでしょうか。 ディズニーランドやディズニーワールドは、今年になって前年比40%近くもの入場者減となっているというニュースも流れています。かのFRB前議長で“マエストロ”とも呼ばれた、アラン・グリーンスパン氏でさえもこのような未曾有の金融危機と急激な株安とが来ることはまったく予想だにしていなかったと議会で証言し、エコノミストの無力さをはからずも露呈させた形となって、議会関係者にも衝撃が走りました。

日本では、100円ショップが繁盛し始めたり、外での飲み会やおつきあいを減らして家で晩酌を楽しんだり、家庭料理を作り込んだりする傾向が高まり、それら家庭用調理品がやはり売れ筋であるというニュースをNHKで見たところです。 靴の修繕屋さんも賑い始め、新しい靴を買わない代わりに修繕に出すという若い女性が増えているというのですから、これでは実体経済がよくなるわけがないですね。 さて、ここでアメリカと日本とを比べた場合、顕著な違いが実体経済の中にひとつだけあることをご指摘したいと思います。

それは、日本人の多くはタンス貯金も含めて、401(k)のような株式市場とは何ら連動していない貯蓄をご自分でお持ちだということです。 アメリカ人には、そのようなタイプの貯蓄はほぼ皆無だといってよいかと思います。 もちろん、リスクをことのほか嫌う日本人の国民性からして、貯蓄を取り崩してまで消費に回すということは、ちょっと考えられないことかもしれませんが、まだ日本人はアメリカ人に比べて、経済的には余力が残っているといえるのではないでしょうか。

その点、アメリカ人はまさに経済の崖っぷちまで追い込まれている状態なのです。 アメリカで株式市場もドルも暴落し続ければ、アメリカ人にとって、一体何に価値が残っているということになるのでしょうか。 今回の金融危機から始まった実体経済へのインパクトは、日本よりもアメリカの方がよほど根が深く、企業にも国民にも相当深刻な経済的打撃であると申し上げることができます。 新大統領が果たす役割と責任は、最初から途方もなく大きな試練であることが火を見るよりも明らかです。




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