
アメリカの公共テレビ放送局であるPBS(Public Broadcasting Service)の看板エコノミストであるジム・レーラー氏の進行による討論会で、最初の約40分が今回の金融危機問題に関しての討論に当てられました。 そして残りが本来の第1回討論会の主要テーマであったはずの軍事・外交政策に関する討論に移りました。 私は日本人なので、両者の細かい英語表現の優劣や微妙なニュアンスまでは、把握しきれないところがありましたが、総じて申し上げればオバマ候補の方がマケイン候補に対して、落ち着いて堂々とした振る舞いで第1回目の討論会を制したような印象を抱きました。
私は、今年4月にペンシルバニアで行われたクリントンとオバマとのタウンミーティングでの討論会、そして8月に教会で行われました、マケインとオバマの個人的信条に関する討論会をテレビで見ましたが、それら過去の討論会と比べると、オバマの冷静さと自信とがいっそう身に付いたものとなり、安定感と一種の風格さえ感じらるようになりました。 その点に関して言えば、マケインは、むしろもう少し冷静になってオバマに対して論理的に討論すべきでなかったかという印象でした。
オバマの戦略としては、今回マケインを舌鋒鋭く攻撃するということはあえて避け、金融危機対策にしても、軍事・外交政策問題にしても、マケインがどうでようが、それはそれでお構いなく自分の考える政策に集中することに徹していたという感じです。 ただ唯一、マケインが持ち出したキッシンジャー元国務大臣の逸話に対しては、オバマは明確に異を唱え、矛盾点を断固指摘しました。 逆にマケインは、オバマをもっと攻撃したかったようでしたが、理論武装が十分とはいえず、攻撃箇所はポイントをとらえきれておらず、その攻撃する矛先は空回りの状態でした。
私としては、オバマがマケインに対して攻撃的ではなかった今回の討論会は若干、消化不良が残るところがありましたが、全部で3回あるテレビ討論会の中での最初から戦略がきちんと練られていて、序盤戦から口角泡を飛ぶような論戦からは一線を画していたのだろうと想像することにしました。 このような戦略は、政治だけでなくビジネスの世界でもよくあることで、英語では、“Disengagement” と呼ばれています。 “Engagement” (「取り組み」・「関与」という意味)という英語に否定語の”Dis-“が接頭語として付いていますので、「取り組まないこと」「関与しないこと」という意味になります。
オバマのこのマケインに対しての“Disengagement” の戦略の真意は私には分かりかねるのですが、討論会後の各サーベイによると、どのメジャーな世論調査結果もオバマに軍配を挙げていることがわかります。 マケインに対し徹底して突っ込みを入れなかったオバマに大統領としての品格と安定感とをテレビ視聴者に印象付けることが出来たのであれば、まさにそれが彼の戦略の真意そのものであったのかもしれません。 マケインには残念ながらそのような戦略が感じられなかったのが、マケインにとっては痛手であったと言えます。 今週は、副大統領候補のテレビ討論会が行われます。 サラ・ペイリンがどのような討論をジョー・バイデンと繰り広げることになるのか、興味深々なところですね。
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