
私の住む地域は、“ウィラメット・バレー”と呼ばれる、南北に流れるウィラメット川を挟んで広がる平野と丘陵地帯になっているのですが、その東側には、カスケード山脈というカリフォルニア州北部からカナダのブリティシュ・コロンビア州まで延びている広大な山脈が南北に走っています。その険しいカスケード山脈を越えると、マドレスやベンド、レッドモンドなどといった町が点在する広大なセントラル・オレゴンに入るわけです。
日本の冬型気圧配置でちょうど日本海側地域で多くの雪や雨を降らせて、その雲が北アルプスなどの山脈にぶちあたったところで、太平洋側の地域は乾燥した晴天が続くというのに似た気象現象が、このウィラメット・バレーとセントラル・オレゴンと間で3,000メートル級の山々が軒並み連なるカスケード山脈を挟んで発生します。ですからこのセントラル・オレゴンでは、年間300日以上の晴天が毎年続き、降水量が少ない高原地帯であることから、この地域は“High Desert”と呼ばれています。
私が通訳のために訪れたマドラスは、実は、私の妻が高校を卒業するまでの9年間、住んでいた小さな田舎町で、彼女にとっては、故郷と呼べる町でもあります。産業は、農業と畜産業とがほとんどで、小麦や牧草、ミントや玉ネギなど乾燥に強い作物が栽培されています。ハイウェイを走れば、牛や馬、羊、そしてラーマなどの家畜がいやおうなしに眼に飛び込んできます。
マドラスのダウンタウンもいかにもアメリカ大西部の中にある田舎町といった風情で、夕食を取りにレストランに入ると、カウボーイハットをかぶった大柄で寡黙な男たちが分厚いステーキやハンバーガーを平らげているのをそこかしこで見かけます。また、平日だというのに、おじいちゃんやおばあちゃんもつれだって、一家そろって外食に繰り出しているファミリーの方々も目につきます。家族のつながりが強く、三世代そろった日常の行動がまさに板についているという感じでしょうか。
マドラスの機械メーカーで働く人々も、映画で出てきそうな、いかにもアメリカ大西部のアウトドアタイプのがっしりとした男たちという感じが滲み出ていて、都会型の町が多い、ウィラメット・バレーに住む男のタイプとはけっこう違って私の眼には映りました。田舎に住む人たちはおそらく日本でも言えることでしょうが、概してとても親切で、朝早くから働くことを厭わないハードワーカーが多いようです。このメーカーで働く人は朝5時から来て仕事をしていると聞き、いったい彼らは夜は何時に寝るのだろうかとふと質問したくなってしまいました。
広大なアメリカ西部のよさと人間や家族の温かみがそのまま残っている小さな田舎町、マドラス。妻の故郷という偶然もあってかもしれませんが、今年の忘れられない思い出がまたひとつ出来ましたね。このマドラスにある機械メーカーでの通訳のおかげで。
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