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皆様、新年おめでとうございます。異文化トークは、昨年2017年はなんと一度も執筆されることなく、1年が終わりました。以前は多い月には週一のペースでこの異文化トークの執筆をしていたこともありました。昨年1回も書くことができなかったのは、当初は書く題材が底をついてしまったからだと考えていたのですが、それよりもなによりも、執筆したいというモチベーションが純粋に自分の中から立ち消えてしまったからだと最近になって実感しました。それは書きたいと思う題材は実は考えればいくらでもあり、ただそれを実行するだけのエネルギーや気力が一向に沸いてこなかったからだと気が付いた次第です。

 
 

この年末から久しぶりに長めの休みを家族と取ることができ、再び何かを書いてみたいという気力がふつふつと蘇ってきました。これは昼夜仕事に自分の持つ時間のほぼすべてがとられ、次から次へと課題をこなしていかなければならなかった、ここ何年にもわたる自分にとって、何かを執筆することができるだけの気力が日常の中から完全に閉め出されていたことをようやくにして認識するまでに至ったのでした。

 
 

振り返ってみても、あたかも強迫観念のように立て続けに仕事を入れてみたり、セミナーの予定を立てたり、そのために出張もひっきりなしの数年間であったと思います。アメリカ各地に出張で出向いてセミナーをしなければ仕事がもらえないというような意識が自分の中で強く働いていて、せわしなく出張スケジュールを作っていました。それは季節のよい春や夏のころであればまだしも、冬場にそのような出張を間髪入れずに立てることによって知らず知らずのうちに自分の健康を蝕み、疲労やストレスを溜め込み、いったん風邪を引くとそれがこじれにこじれていつまでも体調が戻らないということもありました。

 
 

この年齢になってようやく、冬場は春や夏に比べて仕事をセーブしないと疲れやストレスがすぐに溜まりやすくなり、睡眠時間も長めに取る必要があるということをまさに身をもって体得しました。これは単に冬場だからという問題でもなく、年間を通じて上手にコントロールしていく必要があることは言わぬもがなのことです。ということで今年は、年間を通してまずは出張する回数を減らすというのを私の指針にしてみたいと思います。すでに昨年12月は一度も出張を入れませんでした。そのおかげで冬場必ず体調を崩すことのある私が、仕事は相変わらず多忙を極めながらも、今のところすこぶる健康でこの冬場を過ごすことができています。

 

 

いままではかなり無理をしてアメリカ国内を長い時間飛行機に揺られて出張して、そしてセミナーをしてというパターンを繰り返してきたわけですが、今年はそろそろこのパターンから卒業というわけではないにしても、ペースダウンしてみようかと考えています。それは最近読んだ、日経ビジネス誌の中にあった「同時性の解消」に関する記事に大きなヒントを見出すことができました。この記事では、主に日本の宅配便で残業代未払いの問題などが発覚して、そのサービスの提供が限界に近づきつつあり、これは宅配業者と荷物を受け取る人との同時性が過剰サービスを引き起こす主因になっているという論点がクローズアップされていました。

 
 

確かに荷物の運び手と受け手との同時性が解消されなければ、再配達をしなければならない宅配業者の運転手はどうしても過剰業務に陥ってしまいます。そのために発生する残業代支払いは宅配会社にとっては大きなコストになります。しかも人手不足がかつてないほど深刻化する日本の現状においては、それは単にコストに起因する問題だけですまなくなってきています。まあ今回は日本の宅配便サービスについて論じる場ではありませんので、これ以上の討論は差し控えますが、同時性が担保されないとビジネスが成立しないというのでは、やはり多くのビジネスの行く末は限定されたものにならざるを得ません。私が出張しなければ仕事がもらえない、仕事がこないという段階がいつまでも続くようであれば、弊社の将来性への限界はもはや明白であり、そのような状況を早晩解消できることに超したことはないわけです。

 
 

そういうわけで、今年は皆様のもとに直接、生身の私がご訪問してお話をする機会というのは旧年と比べると少なくなるかもしれません。ですが、それは弊社にとっての同時性の解消を戦略化した証左でもあるとご理解していただくことができましたら幸甚なのであります。そのためにも皆様と直接お顔を合わせる時間は減るかもしれないのですが、その代わりといっては何ですが、この異文化トークを含めた物書きの時間だけは何とかして増やしていきたいと念じている次第です。以前は頻繁に出張もし、物書きも精力的にし、と両輪をフル回転させてしゃにむに前進しようとしていた時期もありましたが、今年の11月には還暦を迎える年齢ともあいなり、以前の日本でのサラリーマンであれば定年退職せねばならない時期にさしかかるにつれて、あまりがむしゃらにも突き進んではいけないという悟りのようなものも芽生えている段階です。

 
 

同時性の解消というのは、ネットやAIがますます幅を利かせるこれからの時代にあって、今までにはなかった経営上における非常に重要な視点ではないかと察しています。同時性の解消がいずれかは同時性が尊ばれる機会にもつながるはずで、有名アーティストのコンサートやスポーツイベントの開催に関していえば、同時性がより重みを増し、ビジネスへの成功の鍵を握る貴重なファクターになっているというのもまた事実です。私の訪問やセミナーに希少性が感じられるようになったとき、それは同時性の解消に成功した証左にもなるのではないかと思います。そしてそのときには同時性をまた再び追及してもよい時期なのかもしれません。そのような場面は永遠に来ないかもしれませんが、戦略としては「あり」なのではないかと考えています。とにかくビジネスをはじめ物事のほとんどは、やってみなければ所詮わからないものなのですから。

 
 
 
Pacific Dreams, Inc.
Ken Sakai
President & CEO
kenfsakai@pacificdreams.org