皆様は、”Gig Economy” という英語を聞いたことがありますでしょうか? アメリカでもまだ差ほど市民権を得たというほどの言葉ではないような気もしますが、ITを通じて単発型あるいは請負型で仕事の受発注を行う雇用形態から生まれる経済活動全般を意味しています。Gig Economy の形態の中で働く人たちをGig Worker と呼んだりもしています。雇用関係のソフトウェアメーカーが今年行った調査によると、調査対象者全体の約20%はいままでにGig Work に就いたことがあるということで、特にミレニアム世代と呼ばれている1980年以降に生まれた世代では、30%近い比率になっているという結果が出ています。

 
 

Gig Economy の代表格としてアメリカでも知名度が高いのがスマホの専用アプリを使って配車サービスを提供しているウーバーで、ウーバーの誕生によって、このGig Economy が飛躍的に拡大したということがいえるのではないかと思います。何でも月4回以上働くウーバーの運転手が全米で40万人以上もいるということで、ニューヨーク市などでは同市お馴染みのイエローキャッブよりもはるかに多くのウーバーが市内を流しているということです。実際、ニューヨークのマンハッタンでタクシーをつかまえることは時間帯によっては至難なことが多いのですが、ウーバーはアプリさえうまく起動できれば、あっという間に今いる場所まで車をつけてくれます。

 
 

このようにウーバーはアメリカの主要都市ではいまやどこでもサービスが整っていて、以前のように空港などでレンタカーを借りなくても車社会のアメリカを従来のタクシーの金額の半分以下で目的地まで連れて行ってくれます。私のように年柄年中、日系企業が所在するアメリカの主要大都市を出張している身にとって、その恩恵たるや大変な価値があります。おかげで、いまやウーバーのヘビーユーザーになった私は、かつてのレンタカーのヘビーユーザーは返上して、いかにウーバーをより効果的に使いこなすかに毎度作戦を練ったりしているところなのです。

 
 

さらに私は、今年から民泊サービスのAirbnb(エアビーアンドビー)のサイトから探した個人宅(というよりはアパートの一室)をニューヨークでの滞在場所として使わせていただいています。ニューヨークのマンハッタンでホテルを探すと、どんな医薬手も1200ドルを下回るところはほとんどありません。ところがAirbnbのサイトからは、1100ドル以下で便利のよい、比較的安全な住宅街での宿(アパート)をいくらでも見つけることができます。Airbnbを使って部屋を旅行者に貸し出ししている人は、昼間は自分の仕事を持っていて夕方になると、自宅で民泊業を営むということで、普段使っていない部屋がひとつでもあれば、それで商売になってしまうわけです。特にニューヨークやサンフランシスコのようなホテル代がものすごく高くて、場所も限られたエリアでは、自分の持つ資産価値を有効活用でしますし、たいしたホテルでもないのに1200ドル以上をさらわなければならかなった私のような貧乏ビジネスパーソンにとっては願ってもない出張コストの削減になる嬉しいサービスになります。

 
 

ということで、今年2016年を振り返ってみますと、私にとってはGigEconomy をもっとも活用した年になったのではないかと思います。それは確かに私のように全米各地を頻繁に出張する人間にとっては重宝するサービスであるからですが、多くのアメリカ人は私のように出張ばかりしている人はそれほど多くないし、ましてや会社がきちんとしたホテルを予約してくれますから、Airbnbを会社の出張で使うというような人は恐らく滅多にいないと思われます。その昔、日本で営業の仕事をしていたときに、北海道での出張に何泊かユースホステルを使ったことがありました。釧路にあるユースホテルに泊まったときに、そこのユースのオーナーの人から、仕事での出張で使う人はほとんどいないと言って驚かれたことがありました。自分では出張費削減になると思ってのことでしたし、何よりもユースに泊まれば当時まだ20代前半であった自分と同じような若者が日本全国から旅に来ていて貴重な交流もできるというメリットも感じていました。

 
 

Airbnb ではさらに世界中からきた旅行者の人たちとの交流がそこでは楽しむことができます。ニューヨークではヨーロッパと南米からの旅行者の方が特に多い気がします。ドイツ人やイタリア人の旅行者の方々は、意外にもあまり英語が達者ではなく、手振り身振り使って会話をしないと通じ合いませんでした。それでもお互い旅行先で会って、苦労してわかりあったときは嬉しさもひとしおでした。仕事の出張でも異国へのバケーションでも、旅に変わりはなく、そこには「袖触れ合うも多少の縁」で、ホテル滞在ではなかなか味わえない異文化交流を味わうことができたのは副産物的な嬉しいベネフィットでした。

 
 

Airbnbの名称は、創業者の若者2人が家賃や物価の恐ろしく高いサンフランシスコに移ってきて、自分たちの住まいの居間にエアマットレスを用意して、旅行者が滞在できるようにして、Bed & BreakfastB&B)が始まったというのがその起源だそうです。なので、Air Bed and Breakfast がオリジナルで、そこからAirbnb になったのだそうです。日本にも法的な規制が緩和されて、Airbnbが全面的に営業できるようになれば、世界中からの旅行者がきっと私のような恩恵を受けることになるのではないかと大いに期待されます。Gig Economyではさらにこれからさまざまな新しい画期的なサービスが生まれてくることでしょう。常にアメリカからその産声が発せられるので、また来年はどのようなサービスができ、利用がかなうものか、これからの楽しみでなりません。



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