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先日、ポートランドにあるオレゴン州で唯一の総合医科大学でありますオレゴン健康科学大学(OHSU: Oregon Health Scientific University)に日本からの研究者の方々と訪問する貴重な機会がありました。しカも今回の訪問は、ポートランドのウェストヒルのトップにそびえる本校の方ではなく、OHSUが運営管理する霊長類リサーチセンターと呼ばれる猿を使った実験動物施設への訪問でした。
 
普通ではめったに中に入ることさえできない特別な場所であり、場内にはすべての携帯電話やスマホを含めたデジカメの持ち込みが禁止されていますので、車の中にそれらを置いたままで、意外にもとてもフレンドリーだったセキュリティガードの人にゲートを開けてもらい、広大な場内にいそいそと入りました。アメリカでは、全米8ヶ所に類似の霊長類リサーチセンターがあるということで、このOHSUの施設の特徴としては、何と400匹ものニホンザルがいるということでした。
 
これらニホンザルは、1960年代に日本政府を介して送られてきたサルで、以来、このオレゴンの地で順調に繁殖がなされ、アメリカの他の研究センターで飼われているニホンザルのほとんどが、元をたどればこのOHSUからきたサルなのだそうです。今回の訪問は、ニホンザルとそれ以外のサル(主にアカゲザル)の視察でありました。
 
この施設には、全部で4,700匹のサルがいて、基本的には医学の研究のための実験動物としての役割のために飼育されているのです。それはサルは当然のことですが、人間に最も近い動物であるため、人間で起こる病気であればそれはサルにも起きる病気であるといえるからです。センター内の設備すべては大変清潔に整えられていて、場内を歩いていると自分は何処かの動物園の中に迷い込んでしまったかのような錯覚を覚えます。
 
今回は、屋外で飼われているサルを見ることしか許されませんでしたので、建物の中に入ったサルについては何も見る機会は持てませんでした。しかしその研究用の巨大な建物の外観といい、屋外で飼われているサルたちの環境といい、何処か映画で見たシーンに酷似していることをすぐに感知しました。その映画とは、紛れもないあの「猿の惑星:ジェネシス」で、昨年公開された最新の「猿の惑星」シリーズです。この映画、過去にもいろいろな「猿の惑星」があったわけですが、特殊撮影技術をふんだんに使った、なかなか飽きさせない、見ごたえのある映画ではなかったかと思っていましたので、記憶も鮮明にまだ残っていました。
 
映画との違いは、こちらOHSUで飼われている猿たちは、動物実験で使いやすいように皆スモールサイズの猿たちばかりで、映画に出てくるようなサイズの猿は1匹もいません。最も数の多いアカゲザルは、ニホンザルよりも一回りサイズが小さく、なるほどこのくらいの大きさなら実験にも供しやすいのだろうなと納得しました。とは書きましたが、私は必ずしも猿を使った動物実験には個人的には賛成ではなく、人間の医学のためであるとはいえ、猿たちには気の毒なことだと考えていました。
 
ですが、この清潔な環境の中で飼われている猿はほぼ全頭、猿が本来持っている平均寿命をまっとうしているということを説明で聞きましたので、それならば反対する故もないことだなと今まで私が抱いていた猿を使った動物実験反対の矛先はすんなりと鞘に納めこまれたという次第でありました。
 

アカゲザルは、ちょうど繁殖シーズンが終わったところだということで、たくさんの赤ちゃんザルが私たちに愛嬌を振りまいてくれて、心が和みました。センターで案内をしてくださったとても健康そうな女性研究者の方は、今現在このセンターで力を入れて研究に専念しているのが、認知症の解明、そしてもうひとつは、こちらでは一般的にはMSMultiple Sclerosis:多発性硬化症)と呼ばれて恐れられている難病の解明なのだそうです。

 
そういえば、最新版「猿の惑星」でも医学研究者の主人公が猿を使ってアルツハイマーに効果のある薬を発見し、その発見についてのプレゼンを行うシーンがありましたが、映画も現実の研究の世界も研究している中身はどうも同じのようですね。私が日本の方々と一緒に視察した最後にこれらの体験、特にConfidentiality Agreement は大学を含め、このセンターとの間で何も交わしませんでしたので、あえて私のこのブログで書かさせていただいているとお断りをしておきます。
 
動物実験に反対している人も、この快適な猿の楽園のような施設に一度でも見学に来れば、その考え方は多少とも変わるのではないかと思います。そのためにもこのセンターでは、ある程度の情報開示は必要だとしているというふうに私には解釈できました。猿の飼育係りの方々、セキュリティガードの人、そして何よりも私たちを最初から最後まで案内してくれたちょっと素敵な感じのする女性研究者の方も含めてびっくりするほどセンターにいる皆さんは、フレンドリーでした。また、センターにいたニホンザルたちには、われわれ日本人にとっては馴染み深く、お前たち、頑張れよなと思わず声をかけてやりたい感慨を覚えました。
 
P.S. Pacific Dreams 社のウェブサイトへも是非お越しくださいね。 www.pacificdreams.org