イメージ 1


「自己責任」という言葉は、確定拠出型年金制度である401kが日本でもスタートした2000年代前半あたりから、日本語としても認識され始め、そして今ではより広くそして深く日本の社会の中でも普及するようになってきた言葉ではないかと察しますが、実際のところはどうなのでしょうか。企業勤めのサラリーマンの方々であれば、企業が日本版401kを導入していれば、企業が掛け金の方をすべて支払ってくれるので、401kの年金プランに参加している方も現在ではかなりいらっしゃるのではないかと思われます。
 
アメリカもある程度の規模の企業サイズであれば、401kはすでに導入済みのところがほとんどで、やはり企業勤めのアメリカ人には最も馴染みのある年金プランであるかと申せます。アメリカでは、日本と違って企業側ではなく、普通従業員が給与の中から自動的に月々の積み立てしていくわけなのですが、企業側からもマッチングといって、例えば従業員が1ドル拠出するのに対して企業が50セントをマッチングとして拠出するという恩典を提供しているところもあります。
 
この401kですが、確定拠出型といわれるのは、現役時代に積み立てをする毎回の掛け金の金額(これを“拠出”という)は、確定した一定の金額であるのに対して、退職後(通常60歳以降)に支払われる年金としての受給額というのは、自分の判断でファンドを選んで積み立てを行った投資資金の運用益によって左右されるために未定であるというのがこの年金制度の本質であるかと申せます。
 
ここで、ミソになるのが、「自分の判断でファンドを選んで積み立てをする」という箇所です。他人が決めるのではなく、自己判断で決めますので、その結果は当選「自己責任」となる次第です。ですが、すべてがすべて白黒はっきり分けられるほどの自己判断でもって決めることが出来ているのかというと、ちょっと首を傾げたくなるのも事実なのです。多分それは私だけの感触でそう言っているわけではないと思いますので、その辺のところをちょっとお話させていただきます。
 
アメリカの401kは、先ほども書きましたように企業年金ですので、そもそも企業が401kを運用する会社を選んでその運用会社が提供するミューチュアル・ファンド(MF:株式投資信託)の中から自分でリスクレベルと利回りとに応じて適当と思われる金融商品を選びます。金融商品を自分で選ぶのですが、401kの運用会社は、自分が勤めている企業がすでに選んでいるところなので、運用会社については、何も従業員の自己判断で選んでいるわけではありません。
 
世の中には、個人の資金を運用する会社はゴマンとあり、普通運用会社の一つ一つが運用哲学というものを持っていて、通常はそれらは外部に公表されているはずです。運よく、自分が考えるような運用哲学の運用会社に当たればよいのですが、企業の方が選んでいるので、そのような保証ではありません。ですから、確かに運用哲学が気に食わなければ、無理して企業の提供する401kに入る必要はないのですが、それでも入ってしまうのであれば、やはりそれはそれで自己判断が働いているということにはなりますね。
 
もう少しいうと、企業は従業員に対して401kについてもう少し丁寧に説明をする必要があるのではないかと思うときがあります。だいたい401kの説明会は、運用会社の担当者が企業に出向いて、従業員の前でミューチュアル・ファンドのプレゼンを行います。普通のアメリカ人で大学出の学位のある人間であれば、大体その運用会社の人間が何を言っていることぐらいはわかると思いますが、必ずしも従業員の全員が全員大学出ばかりであるとはいえませんので、中にはアメリカ人でもチンプンカンプンに聴き入っている人だってきっといるに違いありません。
 
いうまでもありませんが、アメリカの事情に疎い、英語ネイティブではない日本人は401kの説明を聞いても、説明会が終わればその後ほとんど何も頭に残っていないというのが現実なのではないでしょうか。(以前、日系企業に勤めていた私はまさにこのパターンでした。)特に、駐在員として来られている日本人にとっては、いつ日本に帰国命令が出るか分からない身分である以上、401kに入ろうなどというような人は、もちろん今もって皆無ではないかと思います。
 
まあ、自分が日本からの駐在員でそのようなベネフィット・プランに関してまったく関係のない部署にいて、しかも会社の幹部クラスに入るのでなければ、単に聞き流してしまって何ら支障はないでしょうが、日本人でも企業の幹部クラスにいる人間がまったくの無関心振りを示すだけというのでは、これは少々問題だと思います。しかも、日本人だけでなく社内にいるアメリカ人幹部でさえも401kのことは、ほぼ運用会社任せですべてを彼らの説明に委ねているところがあります。ですが、その運用会社を選んでいるのは、当の企業側の方なのですから、やはりなぜこの運用会社を選んでいるのか、運用哲学はこうなんだみたいな話をやはり最初に従業員にきちんとすべきではないかと私自身の経験からそう思います。
 
自己判断と自己責任を従業員に負わせるためには、企業としては説明責任をきちんと果たす義務があります。その辺をないがしろにしていて、結果だけを従業員には自己責任だというのでは誰だってすんなりと納得できるわけがないでしょう。保険や年金プランというのは、実際普段はなかなか目には見えないところ、自分がいないところで運用されていますので、加入しようとする人は、最初に基本的な原理原則をしっかりと理解しておく必要があるのではないかと思います。
 
それら原理原則の理解を手助けしてくれるのが、運用会社や保険会社の人間の仕事ではありますが、社内の総務や人事担当者なども門外漢ぶりするのではなく、もっと親身になって従業員への説明をして欲しいと思います。そのような説明責任が果たされてこそ、一人ひとりの自己責任という言葉の重みを従業員も余計に噛み締めることが出来るようになるのではと感じます。
 
 
弊社パシフィック・ドリームズ社のサイトへもどうぞお越し下さい! www.pacificdreams.org