イメージ 1

2012年も早いもので、最初の月がまもなく終わろうとしています。ユーロ圏の国債格付け引き下げの影響や中国をはじめとするアジア圏内での景気の減速が心配されている今年2012年ではありますが、アメリカの方は、多少なりともここのところに来て経済に薄日が差し込み始めた感じがします。論より証拠ということで、いくつかの指標を皆様にご提示してみたいと思います。
 
まずはアメリカの失業率ですが、昨年前半はいずれの月も9%台という高止まりした状態で推移していましたが、昨年11月になって8.7%、そして最新の12月の数字は8.5%までの回復を示すようにまでなりました。それでも日本の失業率の数字から見れば倍近いのですが、一時期は10%台まで上昇を続けていた失業率もここに来て一服しているということは言えるのではないかと思います。今年は、11月に4年に1回の大統領選挙が控えておりますし、現在劣勢を強いられているオバマ大統領にとっても少しでも失業率を改善させなければ再選の可能性は限りなく厳しい茨の道であることに異論を待ちません。
 
失業率は、この調子で行けば、8%前半まで緩やかなカーブを描いて推移していくのではないかと予想されます。失業率の緩やかな改善によって、経済面で期待されるのが、新車販売台数と住宅販売戸数です。特に新車販売は、失業率の浮き沈みに直接的に連動していて、失業率の下降が始まると販売は決まって上昇に転じるものなのです。ですので、今年の新車販売は、どこの自動車メーカーも強気な予測を立てており、それら予測をすべて集計してみますと今年は、昨年比で7%増の1,350万台の販売が見込まれているのだそうです。この数字は2008年のリーマン・ショック後としてはもちろん最も大きな販売台数となります。
 
まあこれは自動車メーカーの予測だからあまり当てにならないと考える向きもきっとあるでしょうから、次は住宅販売の数字を見てみましょう。最新のデータは、昨年12月の中古住宅販売戸数は、前年比で3.6%増、新築住宅販売戸数は、11.6%増、アパートの新築着工件数は、69.1%増ということで、いずれの数字も増加に転じていることがわかります。特に長らく低迷をしていた新築住宅販売がリーマン・ショック後、初めてプラスになったのは、大変喜ばしい兆しだといえます。またアパートの新築件数も非常に高い伸びを示しています。ただし、住宅販売価格の動向を示すS&Pケース・シラー住宅価格指数は、昨年はほぼ一貫して毎月マイナス状態が継続しており、最も新しい昨年10月のデータでも改善の兆しは見られるものの、いまだマイナス1.2%という低調な動きとなっています。
 
いずれにしても自動車も住宅も関連産業を含めて雇用に寄与する裾野が広大であるだけに
最も気になる経済のドライバーであるわけです。そして最後にもうひとつ、ボストン・コンサルティング・グループが出している大変興味深い、アメリカ製造業の復権に関しての衝撃的なレポートについてご紹介をしておきましょう。皆様ご承知の通り、アメリカの製造業は衰退の一途をたどっており、多くの製造業種が国外にある生産拠点に移管してしまい、アメリカ国内の製造業はすっかり空洞化してしまっている状況が続いています。その多くの生産拠点はほかでもない中国に移ってしまっています。ところがこれも皆様ご承知のように中国も労働賃金の上昇は毎年うなぎ登りの状態で、ある統計によると過去10年で毎年平均14.8%のペースで上昇が続いているということです。もし今後も同じようなペースでの賃金の上昇が続けば、10年後には今の賃金の4倍になる計算なのだそうです。
 
ボストン・コンサルティングが行った試算に基づくと、あと5年、すなわち2017年には、中国よりもアメリカ国内でものづくりをした方が、輸送費などを含めたすべてのコスト面とドルに対する人民元の切り上げ(年4%上昇の予測に基づく)、さらにアメリカ製造業の生産性向上などを総合的に考慮すると、優位に立つという予測発表であったのです。また、とりわけどの産業をアメリカに戻すべきであるのかについて、7つの産業を挙げています。その7つとは、自動車部品、コンピュータ、金属製品、産業用機械、プラスティック製品、大型家電製品、家具といった、比較的大きくかさばるものばかりであることがわかります。
 
こうした産業をすべてあわせると、最終消費財として約2兆ドルの規模となり、中国からアメリカに輸出されている額としても1,840億ドルにも達するというのですから、これはもはや天文学的な数字です。しかもそれらの産業での生産が中国からアメリカに移ることによって、最大で300万人の新たな雇用が生まれるというのですから、驚き以外の何ものでもありません。恐らく今年は、それらのシフトの可能性が現実味を帯び始め、試金石となる最初の年になるような予感がします。今まではオフ・ショアリングといって、アメリカ国外に生産を移すことばかりを考えていたアメリカの製造業者もここでパラダイム・シフトを受け入れる最初の段階となるかもしれないのです。
 
日本企業は中国からの脱出を考えるようになり、より賃金の安いベトナムやミャンマー、さらにはバングラデッシュへのシフトをはかるようになるのかもしれません。しかしどこの開発途上国と呼ばれる国にシフトしてもいずれは、それらの国々も新興国としての発展が始まれば、当然のことながら毎年の賃金上昇が日本企業に降りかかってくるということは当然のこととして覚悟していなかればならないことでしょう。1月という1年の最初の月にいろいろと考えさせられる数字をご紹介させていただきました。昨年同様、激動の年になると思われますが、変化から取りこぼされないように、オープンマインドでしなやかに対応していくしかないですね、これはもう。


パシフィックドリームズ社のサイトにも是非お越し下さいね。 www.pacificdreams.org