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昨年のちょうど今頃、アメリカの主な街中には必ずといってよいほどその店舗を見かけるレンタルビデオ・チェーンのブロックバスターが破綻宣言を出し、連邦破産法第11条の適用申請を行い、現在も会社再建中のところです。なぜアメリカ最大手であるレンタルビデオ会社がなぜ破綻にまで追い込まれたかといいますと、それはひとえにネットフリックスというカリフォルニアのシリコンバレーで産声をあげた新興企業が完全無店舗で郵便によって貸しビデオ(DVD)を送り届けるビジネスモデルを確立し、そのビジネスモデルのよって瞬く間に駆逐されたからにほかなりません。まさにビデオレンタル業界は、このネットフリックス社によって、生き残りをかけた峻烈な冬の時代を迎えているのです。
 
日本ではネットフリックス社のサービスはまだ進出していませんので、会社名もそのサービス業容もほとんど知られていないのではないかと思いますが、アメリカではほとんどの家庭で、ネットフリックスのサービスが浸透するようになりました。まず、一度に借りることのできる枚数に応じたサービス内容によって、月額固定制の会員にネット上から登録し、事前に借りたいDVDの予約を入れると、通常間髪入れずにネットフリックスからDVDが郵便で自宅まで送られてきます。ここでブロックバスターと決定的に違うのは、DVDは何日間自宅に置いてあっても、ブロックバスターのような割高なビデオ遅延料の徴収というのは一切ないという点です。逆にブロックバスターは、ビデオの遅延から発生する徴収料金というのが社にとってのドル箱だったのです。
 
実際、ネットフリックス創業者であるリード・ヘイスティング氏は多額のビデオ遅延料をブロックバスターから請求されたことを契機にこのネットフリックスのビジネスモデルを思い付いたのだといわれています。現在のネットフリックスの月額制の料金体系は、月9.99ドルで毎月何本でもDVDを借りる、あるいはネットからのストリーミングをすることができるサービスと、ストリーミングのみによるサービスで月7.99ドルという二本立ての主要サービスに特化しています。我が家も例外に漏れず、妻と娘がすでに数年このネットフリックスの熱心な会員になっておりまして、毎月・毎週のように1枚のDVDの入ったネットフリックスの赤いカバーの封筒を見るようになりました。
 
このネットフリックス、今年の7月になってDVDの郵送レンタル事業とネットからの動画ストリーミング事業を分離し、あらたにストリーミング事業会社をクィックスターという名前に変更したばかりのところなのです。そうなると、郵便レンタル会社のネットフリックスに、月9.99ドル、そしてストリーミング会社のクィックスターに月7.99ドルの合計15.98ドルを毎月支払わわないと両方のサービスが受けられないこととなったのです。これは実質的な大幅値上げでありまして、その結果サービスの契約者数が100万人程度落ち込み、9月現時点での北米(アメリカとカナダ)の契約者数は2,400万人にあるとの発表がつい先日あったばかりのところです。
 
米ナスダックに上場を果たしているネットフリックスの株価もこの発表とともに大幅下落を記録し、ついに飛ぶ鳥をも落とす勢いで成長してきたネットフリックスもそのビジネスモデルに頭打ちの傾向が顕著に現れてきたといえる状況です。ネットフリックスの創業者でCEOの前述のヘイスティング氏は、今回の事業分離はサービス向上のためには必要不可欠であったとして、ある程度の契約者の落ち込みは織り込み済みだとしています。
 
私の目から見てネットフリックスがブロックバスターなどと比べて優れている点は、顧客にとってDVDの選択肢の幅が非常に広いというところがあります。ブロックバスターはその名前の通り(英語の本来の意味は、「超大作大ヒット映画」)、新作の映画や封切りで興行成績の良かったものばかりを数だけ取り揃えている傾向が強く、必ずしも昔の名作や海外の作品などが店頭にそろっているというわけではありませんでした。ところが、ネットフリックスの場合は、昔の名作や海外の作品、そして視聴者のきわめて限られるような教育関係やドキュメンタリー分野の作品であっても非常に充実したリストを常に有しているのです。
 
もちろん、これらの必ずしも一般受けしない作品を持っていられるというのは、ひとえに創業以来、無店舗経営に徹しているからだと思います。ネットフリックスでも人気のある作品や新作は、自宅まで送られてくるまでに時間がかかり、しかもいつ送られてくるのだか、見当もつかないことも少なくありません。(結局、送られてこなかったということもままありました。)このような事態を改善するためでの事業分離だということであれば、それはそれで納得できるのですが、ポイントは当たり前の話ですが、本当にそうなるのかどうかだと思います。しばらく、ネットフリックスのサービスの質向上に関して目を凝らしてみる必要がありそうです。
 
 
P.S.パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。http://www.pacificdreams.org まで。