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タイムスリップなどと書くと、また安っぽいB級映画の上映会後の批評でも書くのかと思われる向きの方もいらっしゃるでしょうが、今回は本当にあった映画の世界のような私自身が実体験したとても不思議なお話です。それはもう今から15年以上も前のことでした。私の千葉市の郊外に住む友人が、新たにレストランを始めるためにレストラン内の装飾品を買い求めてポートランドまで足を運んだことがありました。彼は、かなりアメリカの古きよき時代、いわゆるオールデェイズに傾倒したところがあって、アメリカのクラシックカーやアンティークなどの大好き人間でした。当然ながら彼の新しく開店するレストランも彼の大好きなこのオールデェイスの趣味を大いに反映した店作りにするというのはとても自然な成り行きであったわけです。
 
そこで、まだ当時Pacific Dreamsという会社を始めたばかりの私に白羽の矢が立ったわけです。当時はやはり今と同じように円高がものすごい勢いで進行していたときで、ドル建てで海外から物を購入すれば、かなりのお買い得感があったのはまぎれもない事実だと思います。そこで、彼自らがポートランドまで千葉から飛んできて、その彼の買い物ツアーをコーディネートして車でご案内したのがこの私であったというわけです。そのツアーの中心は、なんといっても彼のレストランで使えるようなアンティークの装飾品を買うことでしたので、考えてお連れした先は、ポートランドのアンティーク街としては規模も名も最も通ったセルウッド地区でした。
 
セルウッド地区でのアンティークショッピングは、目録どおりに行き大成功でした。彼と一緒にお越しになった彼の奥さんも大喜びで、アンティークの照明セットやランプ、食器類など半端でない量を買い込み、私の当時乗っていたクライスラーのミニバンはそれらではちきれそうになりました。半日以上かけてセルウッド地区にあるすべてのアンティークショップを網羅し終わったときには、秋の日暮れは、薄暗闇に変わり小雨もいつからかしとしとと降り始めていました。最後のアンティークショップを後にして、小雨を避けるようにして駐車場まで早足で歩いていたときです。
 
セルウッドのメインストリートの角から少し入ったところより明るい灯火と懐かしいオールデェイスの音楽が突然私たちの耳に流れてきました。あたりはほぼもう完全に真っ暗でしたので、その灯火が非常に明るく感じたのと60年代の音楽が私たちをなぜか妙に誘っているように感じられました。そこで、私たち3人はまさにあうんの呼吸でその明かりの方にいつしか歩を変えて進んでいました。その倉庫のようなたたずまいの家に着くと、ガレージのシャッターが開いた中から数台の修理中のクラシックカーが私たちの目の中に飛び込んできました。ガレージの中にあるのは、まさに1960年代そのままの世界に飛び込んだような光景でした。
 
まさにあっけに取られていた私たち3人の前にどこからともなく現れたのは、俳優のアレック・ボールドウィンに似たハンサムなアメリカ人男性でした。彼は、私たちを手招きで彼のガレージの中に招き入れてくれ、彼が現在手を入れているというアメ車のクラシックカーの状態についてぼそぼそと話し出してくれました。そしてガレージの中にあるラジオからは相変わらず踊りだしたいような軽快な60年代の懐メロミュージックがひっきりなしに流れてくるのです。ガレージ内に所狭しと置かれた修理用のツールは、今では普通もう使われていないようなアンティークの手動タイプのものばかりでした。私たちはもうただただうっとりするだけで、彼のガレージの中に陶酔したようにたたずんでいました。
 
しかし私たちは、アンティークショッピングの後でかなり疲労困憊気味でしたので、ほどなくして後ろ髪を引かれる思いでこの不思議な空間を後にしました。そして車の置いてある駐車場まで戻ると無言でセルウッドのアンティーク街を立ち去りました。この不思議な思い出は、ここまでなのですが、今思い返してみても私たち3人はあのときにどう見ても60年代半ばのアメリカにタイムスリップしてしまったようにしか思えないのです。その証拠にその後何度もポートランドのセルウッドに行った際にかのガレージのあったあたりを散策してみたのですが、あの倉庫風の家もガレージもまったく見つけられないのです。どうも私たちは当時セルウッドの中にぽっかりと明いていたブラックホールに中に足を踏み入れ、その先にあった60年代にタイムスリップてしまった模様です。
 
私たち3人は同時に同じ白昼夢(あたりは小雨の降りしきる暗い夕刻時でした)を見ていたのでしょうか。こんな不思議な経験は今もってこのときだけのことです。アレック・ボールドウィン似の男性は、本当に生きていた生身の人間だったのでしょうか?何度繰り返し考えてみても何も答えは出ません。こんなこと、どなたかご経験した方はいらっしゃいますでしょうか?このブログを書きながらもますます不思議に思えてきてなりません。
 
P.S.パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。http://www.pacificdreams.org まで。