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今回の東日本巨大地震発生以来、目に見えぬ福島第一原発の放射能問題からの不安とそれに伴う電力不足から、日本全体が自粛気分の中にどっぷりと沈みこんでしまって、経済活動全般におけるさらなる深い景気の落ち込みが大変深刻化していました。特に福島第一原発からそれなりに距離が離れていて、放射線量からの直接的な心配がほとんどないと思われる首都圏の経済がかなり萎縮してしまっている様子が、私の取引先や知人などから聞こえてきていました。
 
日本は、現在恒例のゴールデンウィーク(GW)の真っ只中ですが、日経新聞によりますと、日本各地でのGW前半の出足はまずまずのようで、自粛の囲いからようやく少しずつ、こぼれ日がさし始めたというような感じがいたします。それでもこのような未曾有な大災害と原発での放射能漏れでレベル7という事態では、日本国民にかかわらず、災害にあった方々に対して自粛の念を強く持つというのは、洋の東西を問わない人間本来の持つ気質に根ざしてものではないかと思います。
 
アメリカで911の同時多発テロが起こった後も、アメリカといえどもさまざまなイベントやフェスティバルなどは中止または延期になったということを記憶しています。しかしその期間は、日本と比べるとずっと短かったということも今から思うとそのように観察ができます。もちろん今回の大災害では、原発事故がいまだ収束していませんので、911と比較するのは適切ではないかも知れませんが、その911もオサマ・ビンラディンがアメリカの諜報部隊によって殺害されたというニュースがあるまでおよそ10年近くテロの主犯者が捕まらず、しかもその間、今日に至るまで世界各地ではアルカイダ系のテロリストたちが多くの陰惨なテロを引き起こしていました。
 
911が起こるまでは、アメリカ経済は2000年を境にしてドットコムバブルがはじけ、その調整を余儀なくされていましたが、911直前までは、その調整はかなり進んでいて経済自体は上向きになりつつあった時期と重なっています。ですから911は確かに大きな負のインパクトをアメリカ経済全体に与えはしましたが、その後の回復は、きわめて早かったように思えます。日本の今回の大災害も、リーマンショックからの立ち上がりが軌道に乗ってきた矢先のことでありましたので、経済の基調としては上り調子の時期であったと申せます。大変な災害で大変な復興予算が日本では必要ですが、もともとあった上り調子のこの基調を経済活動の自粛でなし崩しにしてはなりません。
 
そこで、アメリカが当時911後に行った施策というのがヒントになるかもしれません。当時を思い浮かべると、まず航空産業や観光産業、ホテルなどが大変な痛手を受けたことがいまだに記憶に残ります。空港での検査や手続きは、困難を極め、出張したりすること自体が私なぞには大変に億劫に感じられましたが、アメリカ人はそれを一向に意にも返さず、旅行者や出張者が激減するようなことは一切なかったように思います。航空会社やホテル業界も値段を大幅にディスカウントして、とにかく市場が冷え切らなることだけはないように工夫を凝らしていました。その辺、今回の大災害後には、そのような施策は取られているようには感じられませんので、国民ならびに企業の自粛とともに市場が冷え込み、日本の航空産業や観光産業はただただどこも大打撃を被っているように映ります。
 
イベントや行事も中止や無期延期になるだけですと、お金は落ちずに経済は一向に回らなくなります。911のときでも、アメリカではイベントの中止や無期延期というのは少なかったように思います。時期をずらしたりして、遅れての開催に何とかこぎつけたところの方が多かったのではなかったでしょうか。日本の自粛する全体の空気の中では考えにくいことかもしれませんが、パーティ好きなアメリカ人は、被災地救済や寄付金集めのためにパーティを企画し、パーティ券販売の収益のみならず、オークションをパーティの中で計画して、そのオークションで得た収益はすべて被災地に寄付するというような仕組みを作っていました。パーティやオークションといった実際にお金をつぎ込んで自ら参加して楽しみながら、救済や寄付に貢献できるというのは、暗くなりがちな自粛の気分をうまく転換させてくれることに異論は出ません。
 
いくらマスコミなどを使ったり、企業トップや政治家などが「自粛を自粛しろ」などと声高に吹聴してみたところで、肝心の受け皿となる企画やイベントがなにもなければ、単に掛け声倒れか、絵に描いた餅で終わってしまうのがせいぜいだろうと思うのです。頭の中身まで自粛して、アイデアや企画までもが自粛していたのでは、立ち上がるきっかけさえもつかむのは難しいのではないでしょうか。日本に来る外国人が急激に減っている昨今、日本行きの航空券や観光地のホテル代を業界全体として大幅に引き下げてみてはどうでしょうか。そして日本にいかれた外国人たちが日本から戻ってきて、日本は安全だった、災害からの復興が進んでいた、そして何よりも人々が親切で歓迎してくれたということを口コミで仲間内に伝えてくれることが今後の日本に最も必要としている部分なのではないでしょうか。世界から見放されたら日本の復興はありえません。自粛などしている暇はないはずなのです。
 
 
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