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以前“ドラマ・クィーン”という言葉の解説を私の会社経営上の経験に基づきまして、本ブログで書いてみたことがありました。今度は、似たような言葉ではあるのですが、“プリマドンナ”という言葉について書いてみたいと思います。プリマドンナは、ドラマ・クィーンよりはお聞きになったことがある言葉ではないかと思います。通常は、プリマドンナとは、オペラで主役を務めるソプラノを歌う女性歌手のことをいうイタリア語です。イタリア語ではありますが、英語にもなっていて、アメリカでは時々ドラマ・クィーンと同じ様にして使われます。意味的には、ドラマ・クィーンに近いのですが、女性歌手という本来のイタリア語にしては、このプリマドンナは、面白いことに男性に対しても使われているようです。そこが、ドラマ・クィーンと少しだけ違うところです。
 
ドラマ・クィーンと比較するとプリマドンナは、確かにオペラの主役なわけですから、ドラマの中のヒロインと共通するところが多いのですが、何といってもオペラの役中で一番注目が集まるのがプリマドンナです。しかもテレビや映画のドラマとは違って、観客がすぐその前にいるので、とにかく目立つわけです。そのような目立ちたがりを揶揄してプリマドンナというわけですので、ドラマ・クィーンとは違って、そこには男女の明確な差というものは消えてなくなります。さらに、ドラマ・クィーンは、アメリカ人女性に顕著だと以前申し上げましたが、ことプリマドンナに関しては、洋の東西を問わず、国籍や文化的背景にもあまり影響を受けないような傾向があります。いわば、これはヒューマン・ネイチャーを構築するひとつの要素なので、人間である以上、程度の差こそあれ、人間誰しももともとから持っているキャラクターのひとつであると申し上げられます。
 

ドラマ・クィーンもネガティブな響きがありますが、こちらプリマドンナも目立ちたがり屋の性格が幅を利かせているアメリカ社会の中であっても、ネガティブな印象が強く、決して評価の対象などにはなっていません。日本語にもなっているエゴ、つまり”Ego” が強い人物がプリマドンナの筆頭候補者であるかと申せます。エゴイスティックな人間は、まわりの人たちからは嫌われますし、グループやコミュニティにとっては、対処するのが難しく厄介な人物像として扱われています。やはり、それは洋の東西を問わず存在する普遍的な人間関係の性(さが)みたいなところがあります。自分さえよければそれでよい、自分だけが目立てば、あとはどうでも構わないという人がいれば、グループもコミュニティも決してうまくまわってはいきません。

 
それでもプリマドンナには、人を魅了してしまうようなカリスマ性をお持ちの御仁が中にはおりますので、そのカリスマ性に魅せられてしまい、本質を見間違って、ときには企業の中核のポジションにまで昇格させたり、企業の命運を託するような新規事業の責任者に抜擢したりといった愚かな決断をしたりすることがあります。そのような重大な局面に接すると人は本来持っている人間性が表面にいやおうなしに出てくるようで、人々はしばらくして大いなる失望を味わうことになります。もともと口数の少ない日本人は、口が達者で得てして派手なパフォーマンスやプレゼンを得意とする人間にはどうも弱いところがあるようです。典型的であるのが、アメリカにある日系企業で、よく散見するのは、実力や管理能力がそれほどあるとは見えないにもかかわらず、外部から日系企業の中枢的なポジションに入ってくるアメリカ人幹部社員がいるという事実です。
 
日系企業で幹部社員たる、そのようなアメリカ人エクゼクティブは、本来であれば同程度のアメリカ企業でも同等レベルのポジションにあって然るべきところであるはずです。しかしながら、アメリカ企業の同レベルのアメリカ人幹部社員と比べてみると、誰が見ても能力的に見劣りがすると云うのが偽らざる事実なのです。つまり、そのアメリカ人幹部は、アメリカ企業にいたのでは、決して自分は幹部社員にはなれないというのが当の本人が一番わかっていることで、それで日系企業に渡りに船という感じで転職してくるケースが多いのではないかと云うのが私の見方です。そういったアメリカ人の中には、結構プリマドンナ的人物が中にはいて、うまく彼ら彼女らの持つ口車に乗せられてあっさりと重要なポジジョンを渡してしまうといったことがあるようなのです。
 
それは、社員の採用に関しても、日系企業は未だに面接だけを重視して採用しているといった傾向が見え隠れするのも気になるところでもあります。英語で立て板に水のような流暢な受け答えをされただけで、日本人の面接官はついその気になってしまうようです。それこそ日系企業との面接の場は、プリマドンナたる人間の真骨頂をまさに遺憾なく発揮する晴れの舞台となってしまいます。私にも過去に自分の会社で面接したアメリカ人の中にそのような人間がいて、あとで苦い経験になったことがありました。日本人は、プリマドンナにはどうも弱いようです。ご同輩の皆様にもぜひ私の教訓を今後に活かしていただきたいと願っております。
 
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