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ここのところの日本の国力の衰退振りには、グローバルな世界の中にあって、経済も政治も外交も本当に目を覆うものがあります。日本に代わってますますパワーの所在を世界に鼓舞しているのが中国であり、韓国であります。その影響は、単なる経済や政治の世界にとどまらず、外国語教育の中にさえも浸透しつつあります。以前は、アメリカの公立中学校や高校でも外国語教育として日本語の選択肢が用意されていて、結構な生徒さんたちが熱心に日本語クラスの受講をしていました。ところが、昨年あたりから、ここオレゴン州の公立学校では金融危機の不況を被って、選択科目数の削減が始まり、その中でも日本語のクラスは、軒並み廃止という憂き目にあっているのです。
 
私の日本人の知り合いの方で、アメリカ人の子供たちに日本語を教える塾の経営をなさっている女性の方がいらっしゃいます。そちらの塾では、毎月生徒さんが増えているというので、意外にも日本語熱は長続きしているものなのだなと感心をしていました。ところがその方に先日お会いして久し振りにお話を聞いてみると、中学や高校で日本語クラスを取って勉強をしていた生徒さんが、昨年あたりから公立学校での日本語クラスそのものが廃止になり、どこか教えてくれるところがないかと探した挙句に辿り着いたのが彼女の経営している日本語塾だったというのです。その意味では、彼女の塾はまさに「日本語駆け込み寺」であると申せましょう。
 
日本語を公立学校で教えていた日本人の方々もクラスがなくなったために、教職の仕事を失い、失業されたという方が何人もいると聞きました。それはひとつには、以前のように日本語クラスを取る生徒さん自体の数も大幅な減少傾向にあるということもクラス削減の理由のひとつだといいます。それでも中には大変熱心に日本語習得に励む生徒さんたちも必ずいるわけで、それら熱心な生徒さんのそれまた熱心な親御さんらが、削減された日本語クラスの受け皿を求めて、今では日本語塾に通わせて日本語の勉強を続けていらっしゃるという構図であるわけなのです。
 
そして、かつての日本語熱に取って代わって今や一大ブレークしているのが中国語クラスなのです。どこもかしこも公立学校は新規の外国語教育に中国語を取り入れようとしているため、慢性的に中国語を教えられる先生がここポートランド地区では不足しているというではありませんか。せっかく見つかった中国語を教えられる先生と云うのも逆に英語はほとんどできないという人で、それでも教壇に立っているということを知らされ、驚きました。それはオレゴンでは、公立学校で教えるためには、大学院卒業レベルの学歴と教職員資格がなければ教えられないことになっているのですが、どうも中国語教育に限ってはそのような要件はまったく無視されている感じなのです。
 
日本にいてもそうですが、外国語教育と云うのは確かに一種のブームやトレンドというものがあって、80年代後半から90年代終わりまでにかけては、日本語はそこそこブームにあやかってクラスを設ける公立学校も随分あったわけです。2000年代に入ってからもアニメやゲームなどから「クールジャパン」を標榜した若い世代が日本に対して憧れを抱くようになり、日本食ブームから日本語への関心も受け継がれてきました。しかしここにきて、以前ほど「クールジャパン」という言葉も聞こえてこなくなりましたし、日本がもはや世界第2位の経済大国でなくなった事実からしても日本語に関する世界の人々の関心度も急激に低下しつつあり、その代わりに台頭してきたのが中国語というわけです。
 
このままですと、日本語教師にとって再就職先を見つけるのはますます困難になる状況が続くのは必至です。ニッチビジネスとして、日本語の塾が日本語を勉強し続けたい生徒さんたちにとっての受け皿でいられるのも、もはや時間の問題であるかもしれません。とにかく、それだけ世界における日本の国力や存在感、地位といったものは凋落し、地に落ちています。こんな状況はアメリカに来て23年になりますが、今が一番ひどいと思います。現地にある日系企業もここ10年余りで随分撤退してしまいました。日本からの観光客や出張者も以前と比べようもないほど激減しているのではないのでしょうか。たしかにこれでは生徒さんに日本語を勉強させる必要性やモチベーションを感じてもらうのはますます困難となりつつある次第です。
 
確かに日本のアニメやゲーム、コスプレに夢中になっている若い世代の連中はポートランド地区にもそこそこいます。しかし所詮、彼ら彼女らはマイナーな存在であり、オタク的な自分たちの持つ小宇宙に満足している人種です。決して主流派になるわけではありません。自分の子供たちには、これからの世界の新たなエンジン役をになうであろう中国に対して、関心を抱いて語学も勉強して欲しいと願う親御さんの方がたくさん出現してくることは容易に想像がつきます。アメリカの日本語教育は、今後私塾でしか勉強が出来ないという時代がもうすぐ近くまで迫っているのです。
 
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