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先日の日本のニュースで、楽天に続いてユニクロを展開するファーストリテイリングも社内の公用語を英語にするとの経営者自ら宣言が行われたとのことで、この勢いからすれば楽天やファーストリテイリングに遅れをとるまじきということで、各業界のトップ企業から遅かれ早かれ社内英語公用語化宣言が出てくるように思われます。まあ一種のブームになりそうな気配がします。確か2000年代のはじめころにSMKという日本の電子部品メーカーがそのような宣言を出したことがあるように記憶しています。(SMKは当時から海外生産比率が60%を超えるグローバル企業です。)また、日産にルノーからカルロス・ゴーンが乗り込んできたときも、英語公用語化宣言を日産は打ち出していましたね。そのあと、英国のピルキントン社を買収した日本板硝子も英国人社長を迎え入れた関係で、英語化宣言にシフトしています。
 
日本に本社がある日本企業が英語を公用語にするということは、社内で行われる会議はすべて今後英語のなるということなのでしょうか。あるいは、社内で作られる膨大な文書も日本語と同様、英語にするということなのでしょうか。私としては、いまいち社内での公用語という定義づけが何であるのかよく分かりません。分かりませんので、私の勝手な解釈をすれば、会議出席者の中で一人でも日本語が分からない人間がいれば、その会議はすべて英語でとり行なわれる、海外に文書を出す、あるいは日本人でない人間にも文書に目を通してもらう可能性のある場合に関しては、日本語と同様に英語にした文書も同時に作成するというようなことではないかと思いますが、実際はいかがなものなのでしょうか。
 

ですので、日本人しか出席しない社内会議をまさか英語でとり行うことはしないのではないかと思いますし、日本の官公庁や役所に出すような文書までも英語にするようなムダはさすがにしないものと思います。英語公用語化を宣言した企業を見てみますと、やはりトップ自身が英語の上手な人、あるいはさほど上手でなくとも英語そのものも海外ビジネス自体が大好き、あるいは少なくとも英語も海外もぜんぜん苦にならないというタイプの人なのではないかと思います。公用語宣言をしたからには、今後管理職の登用には、TOEICの点数いくらという基準も当然設けられるのでしょうね。すでに楽天では、社員にTOEIC700点を要求しているようです。ちなみに、ここアメリカでは、TOEICというのは、ほとんど採用されていませんので、700点でどの程度の英語力があるものなのか、私としては判断に戸惑います。

 
そういえば、かのサムソン電子ではマネジャークラスに昇進するためには、TOEIC 900点以上を条件として課していると聞いたことがあります。そのために韓国では、年少時から母国語並みに英語を身に付けさせようとして、お母さんとともに幼い子供を連れて海外の英語圏に留学に向かう傾向が年々高まっているそうです。当然旦那の方は、母国に単身居残って海外に出て行った妻子の生活費と学費を送金するためにしこしこと働くしかないわけで、「渡り鳥父さん(韓国語で“キロギ・アッパ”と呼ばれる)」は、もはや韓国の社会現象になっているとのことです。
 
私が1990年台後半まで働いていた三菱マテリアルが買収したアメリカの半導体製造企業で働いていたときにも、日本嫌いで通っていた当時の私のアメリカ人上司が、親会社である三菱マテリアルからの文書や会議はすべて英語だけにするようにとの提案を彼のやはり日本嫌いのアメリカ人のディレクターに談判したことがありました。日本嫌いという点だけにおいて一致していた二人のことなので、英語化の圧力を日本人幹部にかけるのかなと外から傍観していましたところ、ディレクターの方があっさり矛を収めてしまい、そのような話が出てきたこと自体をあとになってから否定していました。マネジャーの方は、逆に収まりがつかなくなり、ほどなくして辞表を出して自ら会社を辞めていきました。
 
そういう経緯を当時の日本人で三菱商事ご出身の会長に後日談として報告しますと、まさにもう髪の毛のあまりない頭部のてっぺんから湯気がほとばしり出るように顔も真っ赤にして、そんな輩が日本企業で働いていること自体、まったくもってけしからんと大変なご立腹振りです。まあもうその人間は辞めましたし、そんなに怒ったら血圧がまた上がりますよといっても、まだディレクターが残っているではないかということで、なかなか矛が納まりません。恐らく会長の湯気が頭から出るほどの怒りが風向きに乗って届いたのでしょうか、その年の内にそのディレクターも自ら辞表を出して会社を去りました。
 
三菱商事に長年いらして、海外の主要な支店で支店長を勤められてきた国際的な経験豊富であった会長からしてみても、日本語を禁止するような発言がアメリカ人管理職から出たことは、当時においては言語同断なことであり、ショックであったようです。日本人が日本語が使える自由が制限されるというのは、グローバルのこの時勢にあっては致し方ないことのように思いますが、だからといって企業が英語公用語化宣言を出せばそれで、グローバル企業の仲間入りというような単純なものではないはずです。社内で英語教育を社員に対してどのようにしていくのか、そこまで考えてのことだと思いたいのですが、すべてが自己責任と云うのでは社員がどこまでついてこれるか非常に心配なところです。TOEIC 700点とれれば、英語を使って会議でガンガン発言できるようになるなんてことは決してありえませんので。900点を持っていたって、会議で発言できない日本人がたくさんいるのですから。
 
 
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