
BARTというのは、カリフォルニアのサンフランシスコを中心にベイエリア内を東西南北に走る地下鉄のことです。正式名称は、“Bay Area Rapid Transit”で、その省略形および愛称がBARTというわけです。私は、最初にこのBARTのことを聞いたときには、ついセサミストリートに出てくるあのBartを思わず想像してしまいました。まあ、セサミストリートのBartのように親しみがもてるようにとの配慮が働いていたのかもしれません。そのBARTに先週サンフランシスコに行った際に、3日間、毎日乗車をして面白い観察をすることが出来ましたので、今回はそのお話です。
私は、サンフランシスコに行くときは、サンフランシスコで弁護士をしている友人のアドバイスに従って、最近では、ポートランドからサンフランシスコではなく、湾の東側対岸(イーストベイ)にあるオークランドに飛び、そこからバスとBARTとを使って、サンフランシスコのダウンタウンまで入るようになりました。このやり方は、サンフランシスコ空港からサンフランシスコのダウンタウンに入る時間的な差は、あまり大差がないことと、航空運賃がオークランド便の方が、サンフランシスコ便に比べて通常2,3割安いと云うことがあります。サンフランシスコ空港は、アメリカでもメジャーな国際空港であるのに対して、オークランドは、ひとつの地方空港に過ぎないので、空港の使用料や離発着料などが、きっと安く設定されているのではないかと思われます。
さらに、霧で有名なサンフランシスコは、一年を通じて非常に深い霧に見舞われることがあって、そうなると航空便は、いっせいに軒並み著しい遅れをきたすようになります。特に朝の便に霧による影響が出ることが多いのですが、そうなると、到着時間も読めない、その日の午前中のスケジュールはすべて消化できないということになります。帰りも同じで、いつポートランドに戻れるのか予想がつかなくなることを何度も経験しました。その点、オークランド空港は、霧による遅延の影響はほとんどなく、離発着の時間はほぼ正確に読めます。ということで、価格だけでなく、出張する場合は、離発着時間の精度も大変重要な要素でありますので、もっぱらオークランド空港を使っている次第です。
さて、オークランド空港に着くと、そこからAirBARTという有料のシャトルバスに乗って、Oakland Coliseum というBARTの駅まで行きます。そこから、サンフランシスコ空港方面行きのBARTに乗って、サンフランシスコのダウンタウンまで行きます。その間、オークランド空港からサンフランシスコ・ダウンタウンまでおよそ50分ほどです。そのBARTには、今回サンフランシスコにいた3日間、毎日乗って、ダウンタウンとオークランド空港との間を行ったり来たりしました。普段は、サンフランシスコに行って毎日BARTに乗るなどということはありませんでしたので、3日間毎日乗って気が付いたことがいろいろありました。
まず、座席の大きさがゆったりとしていて、アメリカ人の体格(というか、お尻の大きさ)に合わせてあってアメリカ人の体格からすれば正反対にある私などには、とてもカンフォタブル極まりないシートとなります。また車両の各フロアには、すべてカーペットが引いてあり、これも日本の地下鉄では、決して見ることの出来ない特徴です。そして入り口付近には、広い空きスペースが用意されてあって、そこに自転車を傾けられるようになっています。結構な人が、自転車を持ってBARTに乗り込んできて、そのスペースを使って、快適にBARTを利用している様子を知ることができました。
もうひとつの日本の地下鉄やJRとの違いは、乗客の人たちの中で、携帯電話を使ってメールの打ち込みなどをしている人はほとんどいないということでした。iPhoneなどのスマートフォーンから音楽を聴いている人やiPodを使ってデジタル書籍を読んでいる人もそこそこいましたが、驚くことに紙の新聞や書籍を読んでいる人の方がデジタル機器を使っている人よりもはるかに多かったのは、ちょっと意外でした。東京の地下鉄よりもはるかに読書にふけっている人が多かったのは、アメリカでハードカバーの書籍類を販売している身にとっては、誠に喜ばしい光景として映りました。
夕方6時を回った頃、オークランドからBARTに乗り込んでサンフランシスコに向かっていた途中、黒人の男女二人のティーンエィジャーとまだ幼い面影が残る男の子が乗ってきたかと思うと、おもむろにビートルズの“Let It Be”をギターとパーカッションとともに歌い出したのには、びっくりしました。この三人組はまずまずハモッていて、昔のジャクソン・ファイブに似た感じも醸し出していましたが、ギターは決して上手とは言えず、その昔学生時代には、このビートルズの名曲は自分のギターの十八番にしていた身からすると大変物足りないものでした。まあそれでも一生懸命演奏して歌ってくれたので、まわってきたスーパーのプラスティックバッグに1ドル紙幣を差し入れてあげました。
BARTはこのようにとても快適であったのですが、ひとつ注文を言わせてもらうと駅名の放送がないときの方が多くて、今はどこの駅まで来ているのか、いちいち路線図を見ながら必死に今きている駅を推測しなければならないと云うのは、まさに冷や汗モノでした。しかも、駅には、駅名が書かれていないことが多く、さらに冷や汗を誘う要因でありました。その点は、日本の地下鉄ならびにJRの方がはるかに親切ですね。BARTは特に行き先がいくつかに分かれて複雑にできていますので、自分の行き先地に行くBARTに乗らなかった場合には、ちょっとした悪夢が待ち受けているということになります。車内放送があれば、それも回避できるのですがね。
PS.パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。サイトは毎日更新しています。http://www.pacificdreams.orgまで。
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