私の勝手な思いつきで表現した英語版「見える化」は、”Visualization & Display” というものでした。これで我ながらこの英語表現でけっこう満足していたのです。ところが、先日インターネット上にあった英語で書かれた文献を読んでいたときのことです。その文献の中には何回も”Transparency” という言葉が随所に出てきて、文中の前後関係からの脈絡から言えば、このTransparency こそは、まさに日本語で言うところの「見える化」とまったく同意語で使われているということを悟りました。辞書を引きますと、Transparencyの意味は、透明、透明性(度)ということで、確かに「経営の透明性」などというときには、ピッタリくる言葉でしたが、いまや、それがトヨタの「見える化」の英語版で使われていると云うのは、新鮮な印象でした。
日本の携帯電話などのコンシューマー・エレクトロニクスで特に顕著な傾向にあるのが、「ガラパゴス(化)現象」という奇妙な表現が日本語で、マスコミの中でも跋扈するようになりました。このガラパゴス現象ですが、Galapagos Phenomenon とそのまま英語にしても、ほとんどのアメリカ人には、まったくピンとこないようで、英字新聞のNikkei Weeklyなどには、Galapagos Effect とか、Galapagos Syndrome という英語での記載がありました。中には、JalapagosSyndrome というよく分からない造語をあてている海外のマスメディアもあったようです。とにかく世界で誇れる現象とはとても言えない恥ずかしいお家事情に裏打ちされて出てきた新語です。このような新語に対する英語表現も出てきて、海外からも注目されるようでは、日本のものづくり、ひいてはイノベーションや先端技術の開発にとって大変由々しき事態になっていると申せます。
さて、最後にこれも日本のものづくりの象徴的な表現のひとつで「刷り合わせ」という言葉があります。これは、東大ものづくり経営研究センター長の藤本隆宏教授が提唱している日本のものづくりのコアコンピタンスにあたる部分についてなのですが、これを英語にすると “Integration”という英単語になるようです。ですが、英語のIntegrationと日本語の「刷り合わせ」とは、何となく言葉が持っているニュアンス自体しっくりこないような気がするのです。言ってみれば、Integrationは、かなりドライな感じがするのに対して、刷り合わせはどちらかと云うと、ウエットなものづくりでの泥臭さが感じられます。これもトヨタのカイゼンやカンバンのように、いずれかは日本語がそのまま英語に採用されて定着するしか、本来の意味が伝わらないような気がします。
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