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最近は、セミナーでのプレゼン資料作りやコンサルティング用のリサーチのために、当たり前のことではあるのですが、英語でさまざまな文献を漁ることがしょっちゅうあります。そんな中で発見した今まで英語でなんと言ってよいかわからなかった日本語を英語でズバリ言い表せる単語につきまして、皆様にこっそりとお教えさせていただきたいと存じます。中には、目から鱗という英語も入っています。
 
最初に登場する日本語は、製造業のみならず、企業経営一般にも浸透してきた感のある「見える化」です。もともとトヨタのカイゼン活動から始まったトヨタ用語だと理解していますが、弊社でも業務改善の一環として、数年前にこの「見える化」を従業員ハンドブック改訂の際に新たな会社方針として書き加えたことがありました。弊社は、アメリカで業務を行っている会社でありますので、従業員ハンドブックの記述は、当然英語で書かれています。その際に、「見える化」をどのような英語で表現するかに関して、当時随分と頭をひねらせたものでした。
 

私の勝手な思いつきで表現した英語版「見える化」は、”Visualization & Display” というものでした。これで我ながらこの英語表現でけっこう満足していたのです。ところが、先日インターネット上にあった英語で書かれた文献を読んでいたときのことです。その文献の中には何回も”Transparency” という言葉が随所に出てきて、文中の前後関係からの脈絡から言えば、このTransparency こそは、まさに日本語で言うところの「見える化」とまったく同意語で使われているということを悟りました。辞書を引きますと、Transparencyの意味は、透明、透明性(度)ということで、確かに「経営の透明性」などというときには、ピッタリくる言葉でしたが、いまや、それがトヨタの「見える化」の英語版で使われていると云うのは、新鮮な印象でした。

 
次にお伝えしたいのが「引継ぎ」です。言うまでもないことですが、人事異動や退職などで前の人から次の人に業務を引き継ぐときに行うその「引継ぎ」です。この言葉、実は、和英辞書をあたってみても一言で言い表せるピンと来る英語の単語が一向に見つけられないという類のものでした。なので、私は長いこと、アメリカ人には「引継ぎ」という概念もなければ、それにあたる言葉も存在しないのだとばかり勝手に思い込んでおりました。確かにアメリカ人は、引継ぎすることなどはまるで眼中になく、従業員を簡単にレイオフしたりします。ところがです、「引継ぎ」という意味の言葉、しかも一言で明快に言い表せる言葉をつい最近発見したのです。それは、”Training” です。このシンプルな英単語が、日本語の引継ぎにまさにドンピシャンでマッチするのです。
 
トレーニングという言葉を日本語で考えてみますと、単に「引継ぎ」をするというよりはもうちょっとあらたまった感じがするのではないかと思われます。ですが英語では、社員研修のようなあらたまった場面であっても前任者から後任者への引継ぎの場合であっても、みな押しなべて、Trainingの一言で済ませてしまっているようなのです。これも今までまったく私としては気付かなかった盲点のようなところでしたので、まさに青天の霹靂、目から鱗でありました。
 

日本の携帯電話などのコンシューマー・エレクトロニクスで特に顕著な傾向にあるのが、「ガラパゴス(化)現象」という奇妙な表現が日本語で、マスコミの中でも跋扈するようになりました。このガラパゴス現象ですが、Galapagos Phenomenon とそのまま英語にしても、ほとんどのアメリカ人には、まったくピンとこないようで、英字新聞のNikkei Weeklyなどには、Galapagos Effect とか、Galapagos Syndrome という英語での記載がありました。中には、JalapagosSyndrome というよく分からない造語をあてている海外のマスメディアもあったようです。とにかく世界で誇れる現象とはとても言えない恥ずかしいお家事情に裏打ちされて出てきた新語です。このような新語に対する英語表現も出てきて、海外からも注目されるようでは、日本のものづくり、ひいてはイノベーションや先端技術の開発にとって大変由々しき事態になっていると申せます。 

 

さて、最後にこれも日本のものづくりの象徴的な表現のひとつで「刷り合わせ」という言葉があります。これは、東大ものづくり経営研究センター長の藤本隆宏教授が提唱している日本のものづくりのコアコンピタンスにあたる部分についてなのですが、これを英語にすると  Integration”という英単語になるようです。ですが、英語のIntegrationと日本語の「刷り合わせ」とは、何となく言葉が持っているニュアンス自体しっくりこないような気がするのです。言ってみれば、Integrationは、かなりドライな感じがするのに対して、刷り合わせはどちらかと云うと、ウエットなものづくりでの泥臭さが感じられます。これもトヨタのカイゼンやカンバンのように、いずれかは日本語がそのまま英語に採用されて定着するしか、本来の意味が伝わらないような気がします。

 
もちろんそれまでに日本のものづくりが世界で注目され続けていることが大前提となります。ガラパゴス現象では、世界のユーザーからはもはや相手にもされませんので。そこまで日本のものづくりは追い込まれているという危機的な現実を海外にいる私たちは強く抱いているのです。日本にいる経営者や技術者の方々にはなかなかそれが伝わらないというもどかしさを長い間、感じています。お山の大将や井の中の蛙であってはならないと思うのですが、いったいどうなっているのでしょうか。
 
 

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