イメージ 1

ここのところ、ほぼ毎週のようにシリコンバレーのあるサンノゼへの出張攻めにあっています。毎週飛行機に乗って、サンノゼについてレンタカーを借りて、南北に伸びた平坦なハイウェイ101号線を走り抜けながら、シリコンバレーの要所を行き来していました。シリコンバレーでの楽しみは、この時期ポートランドではまだ雨がひっきりなしに降って凍えるように寒い日でもあってもサンノゼ空港に着くと、見違えるような日差しと吸い込まれそうな大きな青空が歓迎をしてくれること、そしてアジア系の様々なエスニック料理(特にベトナム料理が美味!)が安くておいしいことなどでしょうか。そしてアラスカ航空のポートランドまでの夕刻に出る帰り便で何と無料(英語は、”Complimentary”といいます)で振舞ってくれるオレゴン産地ビールの苦味とカリフォルニア産赤ワインの風味もなかなか捨て難いものがあります。
 
シリコンバレーには、半導体やIT関係の大企業がずらりと本社ビルや本社工場を構えていて近づくだけでも結構圧倒されるのですが、他州や海外の企業のR & D部門の拠点をシリコンバレーにおいている例も枚挙にいとまがありません。さらにノーベル賞受賞者を何人も過去に輩出している世界トップクラスの名門大学がいくつかあり、それら大学の研究施設や大学院などに研究者や技術者、政府機関の関係者などが各国から派遣されてお越しになっているというのも、このシリコンバレーならではの特徴ではないかと思います。また、多くのベンチャーキャピタル(ベンチャー投資家機関)がするどい眼光を放って、美味しい獲物獲得の仕掛け作りに血眼になっているのも他の地域には見られないシリコンバレーらしさとなっています。
 
そのような飛ぶ鳥を落とす勢いを示すシリコンバレーにも、昔から多くのスモールビジネスが実は存在していて、そのスモールビジネスの多くは製造業でありました。しかし今回毎週シリコンバレーに通って感じたことは、シリコンバレーのいわゆるもの作り企業の疲弊度が著しく激しく、ここ1年たらずの間で工場閉鎖や事業撤退に追い込まれた中小の製造業者がいかに多かったかを実感する羽目となりました。その最大級のケースたるものが、サンノゼから北東部に向かったフリーモント市にあるトヨタとGMと間で合弁企業としてNUMMI (New United  Motors Manufacturing, Inc.) で、1984年に設立された当時としては画期的な日米一大合弁企業でありました。しかしご存知のように、リーマン・ショック後のアメリカ国内市場での自動車販売の急激な落ち込みとGMの倒産ならびに国有化から、トヨタは、昨年このNUMMIによる合弁事業を解消する決定を行い、強硬姿勢を崩していなかったアメリカ最大の労働組合であるUAW (United Automobile Workers) もついに苦渋の決断を受け入れ、今月4月に閉鎖の憂き目を見ることになりました。
 
意外な統計であるかもしれないのですが、アメリカの中で労働人口あたりの最も製造業へ依存度が高い州は、このカリフォルニア州なのです。その製造業が盛んであったお膝元の州で今やもの作りは崖っぷちに立たされているといっても過言ではない状況です。以前は製造業が盛んであったので、90年代後半から今世紀初めにかけては、シリコンバレーはアメリカ国内において海外への輸出ベースとして最も大きな金額を稼ぎ出してきました。そして以前のもの作りに代わって、数々の世界に冠たるIT産業がご存知の通りいくつも勃興してきてはいるのですが、IT産業といえども、製造業よりもむしろ容易に海外に出て行ってしまう可能性も今後は考えられるわけで、シリコンバレーの産業構成は将来にわたって盤石であるとはいえません。シリコンバレーでの製造業の流出は、日本の場合と比べてみましてもより深刻な状況を呈しているのではないでしょうか。そして現在はわが世の春を謳歌している名だたるIT企業にとりましても、それは他山の石ともなりうるような恐ろしさが将来は待ち構えているかもしれないのです。
 

シリコンバレーをレンタカーで走り回るとすぐに目に付くのが、閉鎖された工場に車が一台も停まっていないがらんとした駐車場です。またオフィスビルでの空室率も相当なものであることがうかがい知れました。これでは、失業率の改善は少なくともこの西海岸で期待をするのは、まだまだ時期尚早だという実感を抱きました。それでも、シリコンバレーのハイウェイ101号線にはオレゴンではついぞ見たことがないようなスポーツタイプの高級車がそこそこ走っていて、やはり確かに以前と比べると、少しは景気が持ち直してきているのかなという気にもさせられました。日本人の数の目減り具合もシリコンバレーでは結構激しいようで、日系企業の撤退や人減らしについてもそこかしこで耳にいたしました。それでも、生き馬の目を抜くシリコンバレーで企業間競争に伍して未だ現地に残って何とか元気にやっている日系企業は関西出身の企業が多いとのこと。先月書いた私のブログ(「関西出身者が元気な国アメリカ」)はまんざら私の誇張ではなかったのだなと変なところで安堵感を覚えたものでした。

 
 

PS.パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。サイトは毎日更新しています。http://www.pacificdreams.orgまで。