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前回のブログで書きました ”Window of Opportunity” に続いて、今回もOpportunityの入った英語ボキャブラリーのお話となります。 表題の ”Opportunity Cost” は、日本語では、「機会費用」というふうに訳されています。 機会費用とは何を意味するのか、日本語でもよく分からないのではないかと思いますので、一例を挙げて説明してみます。 例えば大学を卒業して就職してから、数年して大学院に入り直して今度はMBAを取得してみようとします。 大学院に入ってMBAを取るためには、通常2年はかかりますので、その2年間を大学院に身を置くことになるとすれば、会社で働いていれば得られる2年分の年収が犠牲になることになります。 2年間大学院に行かなければ、2年分の年収が得られるわけですから、大学院に行ってMBAを取るということは、多大なOpportunity Costを支払うことになる訳です。

このような多大なコストを支払ってでも、人生を長い目で見れば、まだ若いうちにMBAを取っておくということは、その人にとってきっと意義のある投資であり、有望な将来に対してのチャンスでもありますので、優秀なアメリカ人は会社を辞めて、大学院に身を置く人が後を立たないわけです。 Opportunity Costは、その人にとっての先行投資でありますので、投資したことによって将来の自分に十分な見返りが戻ってくる、あるいはキャピタルゲインが見込めると云うことが大前提になるのは申し上げるまでもないことです。 コストを払って投資をしようとすることが意味のないことでは、当然のことですが、誰も進んでOpportunity Costなどは払おうとはしません。

そこで、Opportunity Costを支払ってでも投資するに値する、あるいは実行する価値のある内容のものであるかどうかを見極める見立てというか、眼識力を持つことが非常に重要になります。 仕事もまったく同じで、今は冴えない給料しか会社からはもらっていないけれども、今の仕事を通じて、将来的に飛躍が見込めると思えば、安月給にもめげずに人は、現在の仕事に対して全力で尽くす筈なのです。 もし、将来にわたっても安月給のままで、会社や業界全体の発展も見込めないとしたら、誰だってモチベーションを維持していくのは困難なはずです。 特にアメリカ人は、私の観察や経験から申し上げましても、その辺のところを日本人以上に非常にシビアに捉えているフシがあります。

我々人間に世代交代があるように企業や業界にも栄枯盛衰というか、脚光を浴びたり廃れたりする業種のサイクルが短くなる傾向がますます強くなっています。 そのような現状下では、先見の明を発揮して先行して今後有望な企業や職種を見つけること自体が容易ではなく、またいつの世でもそのようなところには、過当ともいえる競争が常に存在していることを覚悟しなければなりません。 しかもいまや強靭な競争相手が世界中からチャンスをうかがっているという現実も見過ごすことが出来ません。

恐らく日本人でも若い人たちはだんだんとOpportunity Cost をシビアにこれからは考慮に入れていくことになると予想しています。 周りにいるアメリカ人の勤め人を見ていますと、彼ら彼女らのOpportunity Costは、自身のキャリアパスに連動しているようです。 キャリアパスとは、今後3年先あるいは5年先の自分の持つ専門分野における企業内での自身の立ち位置がどうなっているかであるかといえます。 つまり、キャリアパスが自分で働いている企業で見出せなければ、Opportunity Costを支払ってでも大学院に戻るか、あるいは他企業にポジションを見つけるかして、企業を離れる人間がどの時代にも、そしてどの企業内にでも出てくるものなのです。

確かにそういうことのできる人間はもちろん優秀な人間であり、企業内のトップ10%に入る人たちであるといってもよいと思います。Opportunity Costを払ってまで判断するかどうかの見極めが実は一番難しいところで、大企業内での恵まれた環境下にいるのであったら、選択した道があまりにも過大なOpportunity Costを支払うだけに終わったと云うのでは、敗者復活戦がいくらでも許されるアメリカだとはいっても、再度立ち上がるのは容易なことではありません。 しかし、日本人の私から見ると、驚くほどリスクをとってまでもOpportunity Costに対して、ひるむことなくチャレンジしていくアメリカ人の姿を何度もこの目で見てきましたので、 日本人がまだまだ足りない、そして今後とも学ぶべき方向性がアメリカ人からはいつも強く発せられているような思いがするのです。


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