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皆様は、この ”Window of Opportunity” という言葉をお聞きになったことがありますか? 日本語では、「好機到来」というふうに訳されているようです。 Windowは、もちろん窓のことですが、 時間枠、時間帯、時期とかいった派生的な意味も持っており、アメリカではチャンスの到来は、ある時間枠内に限定されたものであるという概念が強くあります。つまり、チャンスというものは、昼間の日差しがまだある暖かいうちは窓は開いているものの、冷たい北風が吹き出したり、日がすっかり落ちてしまえば窓を閉めてしまうのと同じように、窓が開いているうちにチャンスをつかもうとしなければ、もうそのチャンスは後からつかもうとしてもつかめないという考え方です。

重要な決断をするためには、十分な熟考をすることは当然求められることですが、あまりにも熟考しすぎて、判断を下したとときには、もうすでに時遅しと云うことが日本の中にいるとしばしば見受けられます。 あるいは敢えて判断を下さない、決断することを先延ばしにするといった手段も耳にするところです。 特に日本の首相をはじめ、政治家や役人にはこのようなタイプが多いように思えます。 また、官僚主義的な組織構造に陥っている大企業でも、決めるべきことを決めないことによって、せっかくのチャンスをものにすることもなく、重大なタイミングを逸しているという事例には枚挙に暇がありません。

それは、日本の半導体産業をはじめとして、その後の液晶や太陽電池の分野においても、日本は、せっかくのこのWindow of Opportunityに対して同じ轍を懲りもなく踏んでいるように思えてなりません。 半導体の代表挌としてメモリーのDRAMがよく新聞紙上には取り上げられるのですが、DRAMの市況が悪化すると、日本の大手半導体メーカーのいずれもが、過去、投資をいっせいに凍結し、申し合わせたかのように、横一線に同じような経営判断を下します。 かたや韓国や台湾、そしてアメリカのDRAM専業メーカーは、市況が悪化していても、投資計画をあえて断行します。 そして、市況が回復し始めると、市況悪化時に先行投資して立ち上がったばかりの新規生産設備が市況好況時に利益の恩恵に大いに寄与してくれるという好循環を築いてくれるのです。

そんなDRAM専業メーカーは今や日本では、エルピーダメモリーという日立とNECのDRAM事業部合弁という形で生き残りのために生まれた企業1社となってしまいました。 ご存知かとは思いますが、その最後に残ったエルピーダでさえ、倒産を逃れるために、今年の夏、日本政府から一般企業への改正産業再生法の適用第1案件に認定され、企業の存続がかろうじて続いているという状況にあいなっている有様です。

もうひとつ、このWindow of Opportunityには、チャンスは一度逃してしまったら、もう二度目はないという意識が垣間見られます。 日本人は、先ほどのDRAMの例で申し上げますと、市況が悪いときは、とかくガタガタと動くのではなく、市況がよくなるまでじっとして待つという、いわば、「待てば海路の日和あり」という日本古くからの諺の教えに従って、全員で我慢をして苦しいときを耐え忍ぼうとします。しかし、Window of Opportunityは、まったく逆の発想を与えてくれます。まったく逆の発想と云うのは、市況が悪いというのは、競争相手が身動きのとれそうにない時期でもあるので、相手に先んじて思い切った行動の取れるまたとないチャンスなのだという積極的な発想という意味です。

この発想の差を市況の悪化と好況とが繰り返し訪れるシリコンサイクルの中で、すでに15年以上にわたって連綿として再現されているのであれば、もうその差を取り返すと云うのは事実上、不可能ではないかと思われます。 半導体や液晶では世界の中ではもうすでに勝負があったものと思いますので、これから正念場を迎える太陽電池ではなんとか日本勢が巻き返しをはかって欲しいものなのですが、形勢は決して思わしくありません。このままでは、太陽電池も半導体と液晶の二の舞になるような気配です。Window of Opportunityという英語の発想を日本人が身に付けられるのは、一体いつになるというのでしょうか。


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