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「パンドラの箱を開ける」といっても昨年の9月に国としての救済措置を出し惜しんでリーマンブラザーズを清算に追い込み、リーマンショックという全世界的な金融危機に陥れたヘンリー・ポールソン元財務長官のことを書くわけではありません。 インターネットラジオ局としてアメリカでは、最近つとに有名なサイトとなりました、Pandora.com について、今回は書いてみようと思います。 インターネットを四六時中使っている我々にとっては、接続しているインターネットにラジオ局があって、そこから絶えず自分の好みとする音楽が流れてくれば、それはもう理想的な環境だと思えあるわけです。 それを実現してしまったのが、まさしくこのPandora.comというわけです。

このサイトは、シリコンバレー在住で、スタンフォード大学出身の作曲家兼スタジオミュージシャンだったTim Westergrenと彼の仲間が2000年1月に創設したもので、“The Music Genome Project”というプロジェクトを10年近くもの歳月をかけて、50人あまりの音楽解析者の協力を得て400近くの要素にわたって独自の分析を行い、好みに合うと思われる類似した音楽を自動的に選別して、サーチ結果としてそれら音曲をリスナーに提供するという画期的なサイトなのです。

ラジオ局ですから、基本的には無料なのですが、1ヶ月あたり40時間までという設定をかけていて、それ以上の接続時間を越えると、課金制が発生する仕組みとなっています。(とはいっても、1ヶ月わずか$0.99のチャージだけなのですが。) また、インターネットのサイトといいましても、Pandoraは、基本的にはアメリカ国内在住者しか聴けないような設定(メールアドレスで認識させているようです)にしていますので、残念ながら、日本在住で、日本のメールアドレスの保有者は今のところでは、サービスの恩恵に与れません。 これは、恐らく楽曲の著作権とそれにまつわるアーティストに支払うロイヤリティが絡んでの対応策からきているものと思われます。

Pandoraでは、自分の好きなミュージシャンあるいはジャンルのラジオ局を最大100局まで作ることが出来ます。 私が現在作ったラジオ局は、まだ7局だけですがそれら7局に名前の連なったアーティストの曲をとっかえひっかえしながら、大いに楽しませてもらっています。 特にPandoraの有難さを私が感じるのは、出張に出てホテルに泊まるときです。 もともとテレビ番組をほとんど見ない私にとっては、Pandoraはホテル滞在中における格好の気晴らしになっています。 出張だったら、アップルのiPodとiTuneでも十分用が足りるではないかと間違いなく云われそうですが、いまだにiPodを使ったことにないこの身にとっては、いまさらiPodをというのは、きわめて敷居が高いものなのです。

さらにPandoraで自分の好きなアーティストのラジオ局を数局作ってみて発見したことがあります。 それぞれの局で似通った他のアーティストの曲がPandoraでは自動的に流れるのですが、その類似するアーティストの名前さえまったく知らなかったものの、そのアーティストにすっかり魅了されてしまったり、すでに伝説の人となって長いことその存在さえも忘れられていたアーティストがまったく違ったスタイルやテイストで新しいアルバムを何枚も出していたりという事実をPandoraで発見したときの驚きです。

イギリスの伝説的プログレシブ・ロックグループで1960年代終わりからから70年代終わりまで活動していた、ルネサンス(Renaissance)という名前の私が当時から気にかけていたグループがあったのですが、そのラジオ局を作ってみたところ、ルネサンスの曲の次に見慣れないグループが登場してくることに気がつきました。 その名もBlackmore’s Nightといい、ルネサンスに酷似した、プログレではあるものの、フォークロック的な済んだギターの音色と女性ボーカリストの透明な歌声に思わず魅せられてしまいました。 そして、Pandoraのアーティスト紹介記事を読んで思わず唸ってしまったのです。

Blackmore’s NightのBlackmoreとは、ディープパープルやレインボウで超絶ギターテクニックをいやというほど披露してくれたかの幻のギタリスト、Richie Blackmoreではないですか。 レインボウ後のBlackmoreは、何とフォークロックの旗手として、透明で古典的な香りのするギター演奏に徹して、数枚のアルバムを世に人知れずリリースしているのです。 これは本当に驚きの発見以外の何ものでもありませんでした。ことほど左様に、Pandoraのラジオ局は、普通にしていたのでは決して遭遇しないような幻のグループやアーティストの存在を知らしめてくれます。このことこそが、“The Music Genome Project”の最も偉大な成果なのではないかと密かに感じ入っている次第なのです。


PS. パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。サイトは毎日更新しています。http://www.pacificdreams.orgまで。