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先日、ポートランド市内で最も大きな展示会施設でありますオレゴン・コンベンションセンターの大広間を使って、ポートランドにあるBaran Liebman LLP という大手法律事務所が毎年恒例の大規模な雇用法セミナーを半日開催してくれましたので、今回初めて出席してみました。 セミナーは朝8時から始まると云うので、前日は、このセミナー出席のためにコンベンションセンター近くにあるホテルに泊まり込みました。 セミナーの受付は、朝7時15分からで、7時半過ぎにコンベンションセンター内に入って受付を済まし、広大なセミナー会場内に足を踏み入れてみますと、何と6割ほどの席がすでに埋まっている壮観な光景を見ても思わすたじろいでしました。

このセミナーは、半日の雇用法に関する法律セミナーが無料で、しかも朝食や休憩時間のスナック(クッキーなどのお菓子類)や(スターバックスの)コーヒーなども付いているという豪華さで、相当な高利益を稼いでいるやり手の大手法律事務所でなければ、何年にもわたって毎年1回このような大規模の無料セミナーを開くなどということはとてもではないですが、出来ないはずなのです。 今回初めて私は参加しましたので、過去のことは分かりませんが、今年のセミナーは、750名の参加者が参加したと後で発表されました。 私の隣に座った年配のアメリカ人女性はほぼ毎年参加されているということで、彼女によると今年は、会場内の空席が今までと比べて目立つと話してくれました。 そうすると、以前は、もっと多くの方々が参加していたことになります。

毎年この無料セミナーでは、会場での主催テーマが決まっているようで今年は(アフリカの)“サファリ”がテーマになっていました。 サファリの雰囲気を出そうと、ステージやスライドの写真、そして音楽などもサファリのテーマにちなんだものばかりで、これだけテーマに沿ってカスタマイズするのは、さぞかしお金がかかったことであろうなと思える豪華さばかりが目に付きました。 まあ無料セミナーということですから、すべては法律事務所持ちです。 従いまして、その恩恵に浴して無料で参加している私なぞには、何ら小言を言えた立場ではないのですが、これらの演出や過剰な装飾は、源はといえば、皆クライアントが大枚をはたいて支払った、弁護士料金やコンサルティング・フィーから賄っているはずです。 ですから、この法律事務所に仕事を頼んだ暁には、一体1時間いくらのチャージを負わされるものだろうかといらぬ老婆心が自然と頭をもたげてきたものでした。

さて、肝心のセミナーの中身はといいますと、全部で6人の弁護士(パートナーと呼ばれます)がそれぞれの専門分野における雇用法のプレゼンを半日(4時間)の中で行ってくれたのですが、弁護士の資格などはなく、しかもノン・ネイティブ・イングリシュ・スピーカーの身であるこの私にとっては、馴染みであるはずの連邦雇用法とは云えども、彼らのプレゼンや専門用語を理解する敷居は相当に高く、理解度は70%に達するか達しないかの瀬戸際(及第点が取れるかどうか)でありました。 しかも6人もプレゼンをするわけですから、中には、時間通りにとても納まりきれない方も出てきて、どうしても早口で終始まくし立てながらのプレゼンとなってしまい、後半は特に私などにはとても内容がついていけないセミナーという状況にあいなりました。

しかも、弁護士と云うのは、法の解釈をすることのできる資格を持った専門家であるという、きわめてシリアスな立場にあり、扱う事例もすべてシリアスなものばかりなわけですが、そんな状況下であればあるほど、人間はユーモアのセンスだけは忘れたくないとする本能が働くものとみえ、随所に弁護士特有のシニカルなジョークや表現がプレゼン中にちりばめられるという形となりました。 それをゲラゲラと笑う参加者も多かったのですが、私には、一体何のことを云ってくれているのか、それを周りのアメリカ人はなぜゲラゲラと笑えるのか、皆目見当も付かない有様で、彼らのプレゼンを聞きながらフラストレーションがますます募ってきました。 どうも弁護士でないと分からないようなユーモアのセンスと云うのもあるようでしたし、それが分かることをあえてひけらかしてわざと大声で笑い声を立てる輩もいたのではないかと思いたくなりました。(多分間違いなくそうだと思います。)

参加者数公表750人の中で、95%以上は白人の方で、男性よりも女性の方が圧倒的に多いセミナーでした。 (休憩時間の女性トイレに前には長蛇の列ができていました。) セミナー参加者は、企業のHR(人事)部門で働く人と今後弁護士の資格を取ろうと勉強をしている方々がほとんどであったと思います。 日系企業向けのHR関連のセミナーを自ら開く私のような人事コンサルタントの立場の身にとっては、弁護士のプレゼンスタイルと私のスタイルとでは、非常に大きな違いが有ることに今回のセミナーを通して気がつきました。 やはり弁護士は、相手(参加者)にプレッシャーをかけながら、このような法律の変更があって、このようなケース(訴訟)で企業が敗訴しているというような事例をこれでもかと出してきて、注意を喚起するというよりは、むしろ「脅し」に近いアプローチで迫るわけです。 うーん、弁護士とコンサルタントは、二つはまったく違うアプローチを取る人種であると云うことが痛いほど身に沁みた半日セミナーでありました。


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