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我が家の小さな前庭(フロントヤード)には、梅(プラム)の木が2本植えてあります。 日本の梅の木とは様子がちょっと違っていて、葉は、濃い紫色をしていて、梅の実は赤ワインをさらにダークにして黒に限りなく近づけたような色をしています。 今年の夏は、非常に暑い日が数日続き、全般的に温度が高めでしたので、梅の実はより完熟して糖度を高めてくれました。 毎年今頃の9月になりますと、家のドアに通じる小さな道は、木から落ちた梅の実で一杯になります。 しかしただ落ちていくのを見守っていても仕方がないので、今年は、折りたたみの梯子を使って、先週末に低めの枝に生っている梅の実を妻と一緒に収穫することにしました。

近状の家々には、散歩をしてみるとよく分かるのですが、リンゴや洋ナシ、チェリー、そして梅などフルーツの実の生る木がどこにでも植えられています。 そこの家主の人が横着な人で、まったくそれらの実を鑑みないと、木の下や庭先はフルーツだらけになります。 その香ばしいフルーツの匂いはあたり一面に広がり、散歩道で突然リンゴの匂いがしてきたかと思うと数え切れないようなリンゴが庭先でゴロゴロしているのに遭遇したりします。 確かに形は不揃いなリンゴが多いですが、それでも十分食に供することのできるフルーツの実であると思われます。 大恐慌になって職を失っても自家製のフルーツが街路に生っているから大丈夫と言っていた気丈夫な日本人の先人の方がこちらに以前いて、お話をうかがったことをふと懐かしく思い出しました。

さて、我が家に植えてある梅の木に生っている実だという先入観からか、長い間、梅の実はきっとやたら酸っぱいに違いないと思っていたところ、これが梅と驚くぐらいの甘味があってジューシーなのには、妻も私もびっくりしてしまいました。 そのまま食べてもなかなか美味しいのですけれど、皮がやや堅いのと、中には完熟しすぎて、もうジュースだけのようになってしまった実もあります。 それではと、収穫した実は、お気に入りの料理本に出ているデザートレシピーの中の“コブラー”(英語で書くと、“Cobbler”)にしようと妻が言い出しました。 コブラーって、こちらにあるホームメイド風なアメリカ料理を出してくれるレストランのデザートメニューには大抵載っている、スコーンのような甘めの食材の上にベリー類の果汁とバニラアイスクリームが大量にかかっているあのデザートのことかと脳裏に早くもデジカメ・イメージのようなものが涌き上がってきました。

恐らく、コブラーと云うのは、日本の皆さんにはほとんど馴染みのないデザートだと思います。 私ももちろんオレゴンに来て初めてこんなデザートがこちらにはあるのだと思い知らされた次第です。 アメリカの中でも何種類ものベリー類が豊富に取れるオレゴン州では特に人気のあるデザートのようでして、レストランで出されるだけでなく、ホームメイドのコブラーは、欠かすことの出来ない家庭料理の醍醐味のひとつです。 普段、デザートなどを自分から料理して作ろうなどということのほとんどない妻がこういってくれましたので、内心私は、脳裏に浮かんだカブラーのデジタル・イメージとともに思わずほくそえんでしまいました。

果汁を豊穣に含んだ梅の実だけでは、あまりにも水っぽいジュース状態となってしまうため、冷凍庫で凍らせておいたブルーベリーにもすべて動員してもらって、ジュース状態から少しでも餡子(あんこ)状態にしてみるといって、梅の実とブルーベリーとをお鍋でぐつぐつと煮込むことになりました。 まあ、小豆と砂糖とを入れて煮込んでお汁粉を作る代わりに、フルーツを煮込んでフルーツを餡子状態にするような工程を経て、我が家の自家製プラム・コブラーは見事に出来上がりました。 もちろんバニラアイスクリームも入れて、どのレストランで出てくるカブラーにも負けぬ劣らぬぐらいの味わい豊かなデザートが我が家の週末のディナー最後の食卓を飾ったのでした。


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