イメージ 1

アメリカの自動車販売台数が今年に入っても相当な落ち込みを続けているというニュースが連日流れていて、アメリカのビッグスリーの政府支援による救済は果たして効を奏するだろうかという疑念が日に日に募ってまいります。 今では、ビッグスリーだけではなく、自動車部品メーカーも政府への救済を申請しているとのことで、裾野が広いアメリカの自動車産業が被る怒涛のような負の連鎖をいかにして食い止めることができるのか、ここ1,2ヶ月がまさに勝負どころであるといえるでしょう。

アメリカのビッグスリーはどうしてここまで落ち込んでしまったのでしょうか。 もちろん、トヨタでさえ、戦後初の赤字決算になるというのですから、このような危機的な事態が自動車産業界に到来しようとは誰にも予測すらできなかったことは、理解できます。 ですが、ビッグスリー、その中でも一昨年までの70年数年の間、世界の自動車売上げのトップに君臨し続けていたGMが政府からの救済なしには会社の存続さえできないということは、あまりにも異常です。 しかしその予兆は、このGMに限って云えば、かなり前からそれなりの想定はされていたのではないかと私には、思えるフシがあります。

GMの経営形態については、さまざまな経営評論家が今までに問題点を指摘し続けていました。 その最たる人間は、マネジメントを始めて学際的に体系化したかの碩学であり、私の尊敬する故ピーター・ドラッカー氏でした。 彼は戦後間もないときにGMの雇われコンサルタントになり、自身のレポートを当時の経営陣に対して書いていたことはあまりにも有名です。 そのレポートの中で、ドラッカーは、GM解体論を展開しています。 当然のことながら、GMの経営陣はそのレポートについて何ら省みることなく、レポートがあった後には、GMはドラッカーとのコンサルティング契約を破棄しています。

確かにGMには赤字しか生み出していないと思われるブランドや車種がゴロゴロしています。 名前を聞いてもどの車だったか思い出せないし、ましてやそれらの車がGMのグループに所属しているということさえ、一般アメリカ人にとっても見当もつかないことがあまりにも多いわけです。それは、多かれ少なかれ、フォードやクライスラーに対してもほとんど同じような状況ではないのかと申せます。

そして一番厄介なことは、シボレーやサタン、そしてキャデラックやビュイックなどの有数なブランドがいくつもあり、それぞれが大所帯を抱え込む巨大組織にあっても、GMという横串がまったく水平方向から刺されていないというところに深刻な問題が潜んでいます。 つまり各ブランドは、硬直した官僚的な縦割り組織になっていて、品質や技術開発に対する共通した問題や課題があったにしても、決して隣のブランドには相談もしない、問題の所在さえもシェアすることはまったくないという有様でした。

このような融通の利かない、部署内の部分最適を常に最大関心事にした組織を英語ではサイロと呼んでいます。 そう、牧場の中に飼料用の牧草やとうもろこしを入れて保存しているいる、あのサイロです。 私は、アメリカの多くの企業で最も社内コミュニケーションを阻害し、多くの無駄や赤字を生み出しているのがまさにこの組織のサイロ化にあるのではないかと常日頃考えている次第です。 これは、組織が大きいとサイロ化と必ずなるとか、組織が小さければなりえないとか、どうもそういうものでもないようです。 ただし、業績が悪く、赤字を垂れ流し続けているような企業は、規模の大小にかかわらず、ほぼサイロ化が組織に満遍なく顕在していると申し上げてよいでしょう。

さて、弊社パシフィック・ドリームスはどうであったかといいますと、サイロ化の兆候は実は以前から十分あったということが会社の翻訳事業部門を日本の会社である(株)十印に譲渡した後に初めて私自身自覚をさせられました。 そうなのです、組織の中にどっぷり漬かっていると、組織の硬直化というのはその渦中にいたのではまったく見えないものなのです。それにしても、ビッグスリーをはじめとするアメリカ企業のサイロ化は、この国の企業組織を蝕む元凶でありますので、公的資金が導入されても抜本的な経営革命でも起きない限り、またもとの藻くずに早晩戻ってしまうような気がします。 弊社でも十印さんとの統合という“黒船”があったからこそ、サイロ化の壁を崩すことができたのですから。


PS. パシフィック・ドリームス社のサイトにも是非お立ち寄りくださいね。サイトは毎日更新しています。http://www.pacificdreams.orgまで。