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先週木曜日(1月15日)の午後3時半過ぎに起こったUS Airways 1549便のハドソン川着水は、2009年に入ってからアメリカ国内で起こった出来事の中では、最も記憶に残るニュースではなかったでしょうか。 まだ2009年は、年が明けてから2週間半程度しか過ぎていませんので、大げさな言い方に聞こえるかもしれません。ですが、2009年になって聞こえてくるニュースのほとんどは、アメリカ国内での失業率の高さ、そしてビッグ3や金融機関への救済策、さらにオバマ次期大統領の1月20日に控えた就任式についてのことばかりでした。

乗客乗員155名を乗せた1549便は、ニューヨークのラガーディア空港から飛び立った直後に、鳥の群れが飛行機のエンジンに飛び込むという“バード・ストライク”によって、こともあろうに2つある双発エンジンがともにエンジン停止状態に陥りました。 しかし機長の果敢な判断と高度な手動操作とによって、マンハッタンのすぐ近くに流れるハドソン川に見事に着水し、全員が無事救助されたことは、皆様もよくご存知のことだと思います。

ニューヨーク州のデヴィッド・パターソン州知事は、早速にパイロットであったサレンバーガー機長のこの大偉業を称え、“Miracle on the Hudson” (ハドソン川の奇跡)と評しました。 サレンバーガー機長は、瞬時に国民的ヒーローとなりました。 当然のことながら、機長の勇断と手動操縦テクニックがなければ、今回のバード・ストライクによるエンジントラブルによって、大惨事を招いていたであろうことは想像に難くありません。

航空機が凍てつくような冷たい川に着水してから1時間以内に全員が救出されたということを聞くと、救出にあたった水難救助隊員や近くにいたフェリーボートの乗組員など全員がこの奇跡に対して多大な貢献をしたヒーローであったと申し上げてよいかと思います。 CNNのサイトで、この着水の場面と着水後の乗員救出のビデオがアップされていますので、ぜひ下記リンクをクリックして見ていただければと思います。
http://www.cnn.com/2009/US/01/17/usair.splash.video/index.html?eref=rss_topstories
(このビデオを見る限りでは、川に着水する航空機は、完全に制御され、ちょうどスキーのジャンプ競技で選手がゲレンデに着地するような印象を覚えます。)

乗客であった人の中には、水温わずか4度という川の中に飛び込み、近くのボートまで6メートルあまりを泳いで救助されたという人もいたということです。水温4度では、人は10分も水の中にいたら、普通なら寒冷死してしまうそうです。 泳ぎにはかなり自信を持っている私でも、万一このような状況に遭遇した場合、果たして川の中に飛び込めたかどうか、ちょっと想像を絶してしまいますね。

昨年10月に私は、ポートランド空港から成田に向けて飛び立つノースウエスト5便の中にいたのですが、航空機が滑走路に出て、まもなく滑走路を全速力で突っ走ろうとした直前に、エンジンに鳥が飛び込み、航空機は、滑走路途中で止まってしまいました。 機内ではしばらく沈黙の時間が続いた後に、ようやく機内放送があり、機長から離陸前にバード・ストライクに見舞われたため、エンジン修理を今から行うので、離陸が大幅に遅れるというメッセージが伝えられました。

そのためにさらに機内で約2時間ほど、修理のために滑走路真ん中で立ち止まった状態で、機内にて修理が終わるのを待ち続けるということを体験しました。 このように私でもバード・ストライクにあった航空機に乗っていた体験をしているのです。 それが今回は双発エンジンが同時に2つバード・ストライクでやられたというのですから、恐らく前代未聞のことではないかと思われます。

機長の英断と見事といえる救助劇は、大恐慌の状態に近いこの不況期にあって、アメリカ全土に希望の光を与えてくれたとアメリカ国民は感じています。 これが、ハドソン川の奇跡だけにとどまらず、今後のアメリカ経済の奇跡を導いてくれる先導役になってもらえないかと心の中では、皆思っているに違いありません。 最後に、乗客の一人が語っていたきわめてアメリカ英語らしい表現をお伝えしておきましょう。”It is nothing short of a miracle!”(奇跡以外の何ものでもない)



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