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ちょうどハリケーン・グスタフがニューオリンズを直撃するかのニュースが伝えられた9月初めに、ミネソタ州セントポールで開かれていた共和党大会で、もうひとつハリケーン級のニュースがありました。 それは、ほかでもない、共和党の副大統領候補にまったくといってよいほど無名のアラスカ州知事であるサラ・ペイリン氏がマケインによって選ばれたという電撃的なニュースでありました。 オバマが率いる先月行われた民主党大会に比べて、ハリケーン接近の緊急事態もあって、盛り上がりに欠けていた共和党大会に大いなる活力と衝撃とを与えたのは、まさにこのペイリン氏の副大統領候補の発表でした。

もと、準ミス・アラスカに選ばれるだけの美貌の持ち主であり、現在は5人の子持ちの現職知事、全米ライフル協会の終身会員という筋金入りの保守派の代表というさまざまな側面をもち、それらがメディアによって多くのニュース性と意外性とを引き出して、ペイリン氏は、瞬く間に時の人となってしまいました。 しかしいくつかのスキャンダル性のあるニュースも同時にメディアで流され、良くも悪くも、マケイン側の思惑にうまくはまった展開となりました。 一部では、クリントン候補の女性支持者層がオバマからいっせいにマケイン・ペイリンの共和党コンビに流出しているとのこれも真意は定かでない憶測が浮上し、世論調査では、劣勢にあったマケインが、オバマを支持率で逆転したという報道までがまことしやかに伝えられています。

さて、衝撃的なニュース性はメディア関係者にとっては、好都合であったかもしれませんが、時間の経過とともに、この時の人であるペイリン氏の副大統領候補としての適正がここにきて問われ始めています。 言うまでもないことですが、アメリカの副大統領というのは、大統領にもしものことがあった場合には、大統領に代わって、すべての職務執行権限が副大統領に移行されるわけです。 72歳のマケインがもし大統領になった場合には、アメリカ史上で最高齢大統領としての記録更新となるようですので、当然ながら、そのような高齢者大統領には健康問題がつきまとわない保証はまったくありません。

そのようなシナリオの中で、“ホッケーママ”という表現を多用するきわめてドメスティックで、ローカルな関心事にしか念頭にない、外交や国際関係の経験がほぼ皆無という主婦の立場に等しい一人の女性がアメリカならびに世界の政治経済、そして紛争の仲介、現在終わりの見えないイラクやアフガン、そしてグルジアの戦況に米軍最高司令官としての指揮を執る、まあ誰が考えても、常識的には通用しないであろう選択がなされたことが、多くのアメリカ市民も次第にその辺のところを冷静になってようやく分かりかけてきた、そのような空気を感じます。

もちろん、“カントリーファースト”というスローガンを掲げているマケイン陣営にとっては、ペイリン氏のような候補者は、ピッタリはまるところがあっての起用だったのはもちろんのことなのですが、人口が70万にも満たない辺境の地であるアラスカ州から全米、全世界に対して一夜にして躍り出るというのは、いくら“アメリカンドリーム”であるといってみても、おのずとその限界たるところはすぐに見破られ、見定まれてしまうものではないのでしょうか。 (ちなみに人口70万人というのは、ニューヨーク市の人口の10分の一以下だそうです。)

先週全米ネットワークのテレビ局であるABCがペイリン氏との単独会見に初めて成功し、やはり案の定、いくつかの外交問題に突っ込んだ質問を浴びせましたが、驚くことに、“ブッシュ・ドクトリン”という、アフガンやイラクでブッシュ政権が見せた、単独行動に対する方針を貫く外交政策に対して、ペイリン氏はその言葉の存在すら知らなかったことが会見から覗えました。 現ブッシュ政権とは距離を置きたいマケインが選んだ候補なのだから、“ブッシュ・ドクトリン”を知っている必要などないということなのでしょうが、アラスカにいて、子供たちのホッケーの練習に多くの時間を捧げている主婦である人が、“ブッシュ・ドクトリン”が何たるかを知る必要性や動機付けなど、まったくといってよいほどなくて当たり前なわけです。

このようにテレビ局での独占会見をすればするほど、ペイリン氏のほころびが今後出てくることはほぼ間違いないことのようです。 ペイリン氏の起用によって、最後の賭けに出たマケインの戦術には、陰りがすでに見え始めています。 オバマは、恐らく大統領選挙まで3回あるマケインとのテレビ討論会での一騎打ちに全神経を傾けてくるものと考えられます。 一騎打ちで行われる討論会での拙劣こそが大統領選でもっとも直接的にアメリカの無党派層や浮動票を取り込む決定的な要因材料となるのですから。


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