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日本に出張で行くときは必ず食べないと気のすまないメニューがあります。それは私にとって「トンカツ」にほかありません。もちろんアメリカの日本食レストランでも食べられないことはないのですが、寿司や天婦羅をメインに掲げているところがほとんどのアメリカにある日本食レストランでは、片手間でトンカツを申し分け程度でやっているという感じがして、私としてはまったくもの足りません。日本でも美味しいトンカツはやはりトンカツ専門のお店で食べないことには、同じような経験を踏むだけなのではと思います。

アメリカでは、美味しいトンカツにはまず巡り合うことはほとんど不可能だということで、長年完全に諦めていたのですが、以前、カナダのトロント近郊に1ヶ月以上にわたって長期出張をしていたときに、シュニッツェル(Schnitzel)という元々はドイツ/オーストリア地方での料理に遭遇しました。これは、子牛のヒレ肉を使ったカツレツで、牛肉と豚肉との違いがあるのですが、日本のトンカツを十分思い起こさせるお料理でありました。

私が滞在していたトロントから西に向かって1時間ほど行ったところにあるグエルフ(Guelph)という町は、グエルフ大学といくつかの重工業を営む工場の点在する古い町で、中欧や東欧からの移民の方が多く住んでいました。

私は日本企業からの委託製造プロジェクト管理のためにその地にある水処理装置メーカーに長期出張したのですが、その会社の社員食堂にお昼時に行きますと、西海岸のオレゴンでは聞いたことのない、メニューが日替わりスペシャルで供されていました。そのひとつが、シュニッツェルでした。さらにハンガリー料理として有名はグーラッシュ(Goulash) というパプリカの効いた牛肉シチューも味わい、この2つの料理でどんなにかカナダ滞在が味わい深いものになったか計り知れませんでした。

地元に人に聞いてみますと、シュニッツェルもグーラッシュも当地の人は普通に食べる食事であることを知りました。カナダの出張からオレゴンに戻ってきた後、わが町セーレムに唯一あったハンガリー料理のレストランに行ってみますと、この2つのメニューは、正に日本の寿司と天婦羅の関係にあることが一目瞭然で分かりました。シュニッツェルは、トンカツに比べて肉が薄く、その代わりお皿をはみ出すような大きさで、食べ応え十分です。シュニッツェルが大きいのは、きっとヨーロッパから入ってきた後にアメリカナイズされた結果ではないかと察しています。

日本に行ったことのあるアメリカ人もトンカツはほぼ押し並べて大好評のようで、トンカツを食べにまた日本に行きたいなどと真顔でいうアメリカ人を何人も私はオレゴンにいて知っています。かの私が尊敬してやまない、ロック・ギタリストのエリック・クラプトンも日経新聞社とのインタビューで次回の日本公演で食べられるトンカツを今から楽しみにしていると語っていました。だいたい欧米人は、優れた豚肉料理のレセピーを持っていないせいなのか、豚肉のうまさをわかっていない人たちが多すぎる気がいたします。

アメリカでの寿司ブームの次に、トンカツブームが来ないかなどと、はかないImpossible Dreamsを思い描いてはいますが、まあドイツ料理やハンガリー料理のお店を見つけて、トンカツの代わりとしてこのシュニッツェルを注文するのも実はまんざらではありません。日本のトンカツの味を補っても余りあるシュニッツェル、当地の日本食レストランで注文するトンカツよりもはるかに味も量も約束できると申せます。


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