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先週訪れていたロードアイランド州プロビデンスとマサチューセッツ州ボストンには、アイリッシュ風パブが街のいたるところにあります。街にはカソリック教会の荘厳な建物も目立ち、私たち訪問者の眼を引きます。それらは、アイルランド系の移民が多い街であることを物語っています。カソリック教会の建物は、外側からしか見ませんでしたが、アイリッシュ・パブの建物はしっかりと中を“見学”しに入ったものでした。

パブの中はどのお店も薄暗くて、1年のうちで日が最も長い夏至のすぐ後で、日差しがまだ高い午後7時過ぎに店の中に入りますと、急に暗い空間が現れて、眼が暗闇に慣れない感じでちょっと不意を突かれます。どこのお店でも、スラリとしたきれい目な女性が、だけども何となくぶっきらぼうに空いている適当なテーブルまで案内してくれます。

プロビデンスもボストンから車で約1時間の近距離にありましたので、やはりビールはボストンの地ビールとして有名な“サミュエル・アダムス”のドラフトビールを注文しました。ドラフトビールは、瓶入りビールとは違い、ビール専用の蛇口がついた容器からビールが注がれます。ちょうどカウンターに近いテーブルに陣取ったものですから、お店のバーテンダーの人がビールを注ぐのが間近で見えます。どうもその日は、6月のプロビデンスにしてはけっこう暑い日で、しかも湿度が高かったせいもあり、ジョッキに注ぎ込まれたビールの泡の量が半端ではありませんでした。

お店のバーテンダーは何回も泡を切ろうとしてビールを注ぎ込むのですが、なかなかうまくいきません。そこで、ドラフトビールは今日はもうこれで打ち切りにするので、瓶入りのサミュエル・アダムスでもよいかと言うから、蒸し暑さで喉の渇いている身にとっては、何でもいいから早く出してよというところでありますので、間髪入れず“Why not!”であります。
テーブルに案内してくれたスタイルのよい先ほどの女性がすぐに瓶入りのサミュエル・アダムスを持ってきてくれましたので、一気に半分以上飲んでしまいました。

それを見ていたお店のウエイトレスの女性は、とてもよい飲みっぷりだといって、先ほど泡切れせずに困難を極めていたサミュエル・アダムスのドラフトビールが入ったグラスを持ってきてくれました。これはノーチャージだからご自由にということで、何と2杯目はタダ、瓶入りとドラフトのサミュエル・アダムス両方を1杯分のお値段($4.50)で楽しむことができました。これで、私はますますBoston Beer社醸造のこのサミュエル・アダムスの熱心な信奉者になってしまったのでした。

ここオレゴン州ポートランドは、実はアメリカでは地ビールのメッカといわれているところなのですが、サミュエル・アダムスに匹敵する品質のビールはまだ生まれてきていないように思います。サミュエル・アダムスは、ボストンの地ビールとして始まったものの、瞬く間にその上質な味わいを全米にとどろかせ、今では全米どこに行ってもこの地ビールを味わうことが可能なのです。地ビールですので、アルコール度がやや高く、モルツの効いた、フルーティな味わいが信条です。

ビールの名前になっているサミュエル・アダムスとは、アメリカの独立戦争時代に大活躍された勇士だそうで、歴史の教科書に必ず出てくるかの有名なボストン茶事件の首謀者、独立宣言の起草者の1人、そして初代マサチューセッツ州の州知事を勤めた名士であったそうです。アメリカ独立の父とまで称された、このサミュエル・アダムスの本業は何とビールの醸造人であったということですから、さもありなんですね。ビール醸造会社であるBoston Beerを興したJim Koch (クークと発音するそうな)氏は、そのサミュエル・アダムスの末裔というのですから、まさに筋金入りの伝統と歴史を持って生まれてきたようなビールなのですね、このビールは。

アメリカ独立の当時の状況に思いをはせながら、この季節、美味しい地ビールをじっくりと味わいたいものです。7月4日の独立記念日がこの水曜日に控えていますので、サミュエル・アダムスを近くのスーパーで捜し求めて、7月4日にアメリカ独立記念日に乾杯ということにしたいと思います。オレゴンは歴史が新しい方なので、独立記念日当時は、アメリカインディアン以外には誰も西洋人はいなかったので、独立戦争のことを口にする人はほとんどいませんが、サミュエル・アダムスを引き合いに出して、当時を思うのもまんざらではないような気がいたします。




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