現在でもケルト人の子孫が住み続ける地域として残存する国々の中で、最もその伝統や文化が色濃く残っているといわれるのが、アイルランドです。そのアイルランドから最近ブームとして湧き上がってきているのが、このケルティック・ミュージックなのです。そのまさに火付け役となったのが、アイルランド出身の女性5人が集まって2004年に結成された、ケルティック・ウーマンというグループです。
こちらアメリカでは、PBS(オレゴン州では、OPB)という公共テレビ局で彼女たちのダブリンでのライブコンサートが放映されてから、大変な注目を集め、最初のアルバム“Celtic Woman“も全米ビルボード誌の世界音楽チャート第1位を獲得しています。そして、このケルティック・ウーマンだけではなく、多くの音楽グループがアイルランドからアメリカに彼らのケルティック・ミュージックを輩出するようになり、ケルティック・ミュージックの一大マーケットがここアメリカで生まれているのです。
ケルティック・ミュージックを繰り返し何度も聴いていますと、何となくどこかで聴いたような旋律やリズムが出くわすことがあります。しばらくはどこで聴いた音であったか、判然とはしなかったのですが、はるか深くに眠っている記憶を掘り起こしてみますと、私が高校時代から大学時代にかけて、夢中になって聴いていたイギリスのプログレッシブ・ロック(プログレ)グループの音と相通じるものであることを突き止めました。今から30年近く前の時代に遡りますか、1970年代後半から1980年代初めにかけての時代です。当時はイギリスのロックバンドの音楽ばかりを聴きまくっていたときがありまして、そのころのピンクフロイドやキングクリムゾン、そしてイエスなどの音作りの底流にあったのが、この今はケルティック・ミュージックと呼ばれている音であることを察知いたしました。
ピンクフロイドやキングクリムゾンの音作りはいつもとても神秘的で、狂気と正気とが紙一重のような内容を独特な音効果を使って表現していましたが、まさかそれら源流にこのようなケルティックの流れがあったということはちょっと驚きです。そういえば、イエスのリーダー格であったジョン・アンダーソンもケルティック系のソロアルバムをかなり前になりますが、出していて、イエスをやっていたときの音楽とぜんぜん違うじゃんとそのときは感じましたが、やはり奥深くではきちんとつながっていたのですね。
ケルティックは音楽だけではなく、ダンスの世界でも独特のスタイルを作り出しておりまして、以前からやはりアメリカでは大きなブームになって、それが今でも続いています。ミュージカルにもなっている“リバーダンス”は、アメリカでは興行的にも大ヒットしました。
もともとニューヨークやシカゴなどアイルランド系の多い大都市部でブームに火がついたようですが、アイルランド系のアメリカ人に限らず、普遍的に人々の深く眠っている太古の記憶や原風景の自然への憧憬などとあいまってこのケルティック・ミュージックは、心の中に響き、訴えかけてくるような気がします。そしてケルティックの多くがアイルランドの若い女性が発信しているというのも意外です。プログレ時代と大きく異なるのは、男性ばかりがやっていたプログレとは異なる、女性特有のエネルギーを現代のケルティックからは感じることができる点ではないかと思います。
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