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企業のトップにまで登りつめた人には、けっこうユニークで個性的な人が多いのは、恐らく洋の東西を問わないのではないかと思われます。私は、昔から在籍をしておりました日米の半導体業界には、知己の方が多いのでありますが、その中でもアイダホ州ボイジーに本社を置くメモリーチップ製造ではアメリカ最大手のマイクロン・テクノロジーを率いるスティーブ・アップルトン会長兼CEO(46歳)は、ケタ外れのユニークな行動(時にはかなりのリスクも伴う)でつとに有名です。

マイクロンは、もともとは、アイダホ州で財を成したアイダホポテトの生産者団体が資金を提供して産声を上げた企業で、農業生産者がハイテック業界で名を成したという意味でもユニークなバックグラウンドを持った企業であります。最近では、IM フラッシュ・テクノロジーというインテルとの合弁企業も立ち上げ、NAND型フラッシュ・メモリーと呼ばれる、デジカメの画像記憶やiPodの音楽を保存するための半導体メモリーの設計と製造とに社運を賭けています。

テニスによって得た奨学金でボイジー州立大学に入学し、経営学専攻で卒業したアップルトン氏は、1983年にボイジーの外れにある材木置き場近くの創業まもないマイクロン社に入社しました。彼はマイクロンでの最初の仕事は、チップ製造ラインの廃棄物置場でわずか4ドル46セントの時給で働いていたということです。その後アップルトン氏は、シリコンサイクルの波に呑まれ、幾多の企業存続危機にあいながらも11回の昇進のあと1991年には社長に、1994年にはCEOに就任しています。

アップルトン氏が有名なのはマイクロンで立身出世街道をまっしぐらに進んだということもさることながら、ハイパフォーマンスの航空機を使った危険性の高い娯楽に自身の情熱を燃やすことでも彼の名前が知れ渡っています。驚くことに現在までに彼は20機もの航空機を所有し、アップルトン・エア・スポーツという名の航空ショーまで彼のサイドビジネスとして興行しているほどなのです。

アップルトン氏は、地元新聞社からの最近の取材の中で、アップルトン・エア・スポーツ社のモットーは何かという問いに対して、「アドレナリンを正直に受け止めること」だと話しています。「マイクロン社で意思決定をすることは、たとえそれが1時間であっても一生のことのように感じられる。しかしモトクロス・バイクでジャンプしたり、航空ショーでアクロバット飛行をしたりするときには迅速かつ正しい判断をしなければ、大変な怪我をしてしまうからね。こういう意思決定は自分のビジネス・スキルを高めてくれる。」

マイクロン社の取締役会議では、フォーチューン500に入る企業のCEOがなぜ週末をハイパフォーマンス航空機で肝をつぶすようなことに明け暮れているのかと訊かれることが良くあるという。そんなときには、アップルトン氏は決まって次のような説明をするという。「私は役員たちに、ハイパフォーマンス航空機で飛行するのはDRAMビジネスよりもリスクが少ないからさ。」